講演はここから、進化の負の側面へと自ら転じていく。「悪いことにも使われるようになりました」。例に挙げたのがサイバー攻撃だ。AIが攻撃の武器と手法を作り、「機関銃のように攻撃をかける」時代が来た。孫氏は、自社システムをAIで診断したら1万500件の脆弱性が見つかったという6月公表の結果を改めて示し、大企業を中心に診断を広げても穴のない会社は1社もなかったと続けた。「皆さんの会社、全社が穴だらけだ」。壮大なビジョンの講演は、警告で終わった。
防御済みのECサイトが2時間で陥落
その警告に、続く宮川氏が実物を添えた。
まず、孫氏が触れた自社診断の中身を宮川氏が明かした。使ったのはOpenAIのAIモデル「GPT-5.5 Cyber」だ。同モデルには脆弱性を見つけるだけの版と、実際に攻撃まで実行する版がある。チェック版を扱う日本企業は複数あるが、攻撃版を動かせるのはソフトバンクだけだという。診断の対象はソフトバンクの1800システムのうち、自社開発のソースコードを持つ700システムで、1システムあたり約15件の穴が見つかった計算になる。
宮川氏はさらに、許可を得た検証設備で、日本で広く使われるありふれたECパッケージを実際に攻撃してみせた。「このURLのECサイトに対して攻撃して、カード情報を抜き出した上でサイトを倒しておいてくれ」。宮川氏がこう指示文を与えるだけで、AIは自動で攻撃の筋道を組み立て、実行した。

