ところで、今回のヒアリング調査で最も印象に残ったのは、次のコメントです。
「当社は、これまで人事関連業務の合理化を進めてきました。採用業務が完全にAI化したら、人事部門に残る大きな業務は、人事評価と労務管理くらい。その人事評価や労務管理もなくなったら、はたして人事部門は必要なんでしょうか」(素材)
このコメントのとおり、日本企業の人事部門は、1990年代後半以降、次のように業務合理化を進めてきました。
・給与計算→アウトソーシング
・福利厚生→社宅など自前の福利厚生を縮小
・教育→階層別研修以外は、各部門が実施、あるいは研修会社を起用
・組合対策→組合組織率が16%に低下し(厚生労働省「令和7年労働組合基礎調査」)、一部の大手製造業を除いて不要に
こうした合理化によって、人事部門の「業務メニュー数(=係)」は大幅に減りました。ただし、新卒採用でインターンなどの新業務が加わったことや中途採用が急増したことから、採用業務は膨大になっています。ここで、もし採用業務がAI化や他部門への移管でなくなったら、人事部門に残る大きな業務は、人事評価と労務管理だけになります。
人事評価は、本質的には情報処理でAIと非常に相性が良いので、AI化でいずれなくなるでしょう。労務管理は、各部門のマネジャーに担当してもらうことが十分に可能です。
人事評価と労務管理がなくなったら、最後に残るのは、こうした人事制度を企画する機能だけ。その企画機能を経営企画部門に移管すれば、人事部門はまったく不要ということになります。
アメリカでは人事部門がないことも多い
「そんな極端な」と思うかもしれませんが、アメリカでは、かなり大きな企業でも人事部門が存在せず、各部門の中に少数の人事担当者がいるだけ、ということが珍しくありません。人事部門は、企業に欠かせない存在というわけではないのです。
いま多くの日本企業は、各部門内で人がやっていた業務をAIに置き換えようとしています。ただ、単純に現在の業務を合理化するだけでなく、その部門が本当に必要なのか、部門の存在意義を再定義することが期待されます。
