――事件の全貌が見えづらかったなか、栗田さんがルフィグループを題材に据えたのはなぜでしょう。
栗田:知人の記者から、「山田李沙というかけ子が、獄中で自伝的な小説を書いているけど興味はあるか?」と紹介を受けたんです。
そこで手紙のやり取りや面会を重ねていくうちに、次々と奇怪なエピソードが出てきたんです。「自称“伝説のかけ子”として6億円近い金額を詐取した」「グループの男性20人近くと関係を持った」「敵対する詐欺拠点にスパイとして送り込まれてトップとも男女の関係になった」など、報道にも出ていない話が飛び出した。
そこから事件に引き込まれていくうち、ルフィグループの幹部であった小島智信との接触にも成功し、他のメンバーらの公判も始まっていきます。裁判内容もかなり強烈だったため、これなら1冊の本になるという手応えもあり、犯罪組織の実態やメンバーの素性を描き出そうと取材を重ねていきました。
かけ子山田が過ごした幼少時代
――山田と接触を重ねる中で、彼女にどのような印象を抱きましたか?
栗田:先ほど紹介した山田のエピソードの背景には、少なからず彼女の生育環境や、それゆえに植え付けられた自己肯定感の低さが影響しているように見受けられました。
酒やギャンブルに放蕩していた父を持ち、借金に追われて格安の住宅に引っ越した山田は、同級生からは「貧乏」とあだ名をつけられていた。自分の容姿にも自信がなく、手紙のやり取りでも「私の根底にはずっと『お金を稼げないと価値がない』という強迫観念があった」と告白しています。
高校生になると援助交際を始め、その後もセックスワーカーとして長い期間働くなか、お金を稼げれば特に抵抗はなかったと打ち明けています。山田が特殊詐欺グループ内の多くの男性と肉体関係を持ったと主張したのも、貞操観念という価値観が極めて希薄だった土壌が関係していたのではないでしょうか。
もちろん犯罪が生まれる背景に、当事者のバックグラウンドがどれほど影響しているかは言及しづらいですが、少なくとも彼女の場合はその傾向が強く出ていた。22歳で闇バイトに応募した際も、「売春でも犯罪でもお金を得られれば大して変わらないと思った」と話しており、犯罪に手を染める人の動機として核心を突いているなと。

