繰り返すが、本作は決して“駄作”ではない。ただ、ファンと制作サイドで“致命的なミスマッチ”が起きてしまったのだろうな……と想像できて胃が痛くなった。
なぜなら、実際に映画を見たうえで「きっと制作サイドは真剣に本作を作ったのだろう」と感じたからだ。作中では『ケロロ軍曹』らしさのある展開や、おなじみのキャラクターたちの活躍が描かれている。さらに、日常からはじまって日常で終わる王道ストーリーは決して満足度が低い内容ではなかった。「ずっと『ケロロ軍曹』を好きでいてくれたファンに喜んでもらおう」とたくさんの要素を入れたのだろう。
ただ、それはファンにとって「期待していた内容」ではなかったのだ。『ケロロ軍曹』はパロディを多く含む作品だ。地上波アニメでもパロディがあったし、それを楽しんでもいた。だからこそ、パロディがあることそのものは素直に受け入れられる……のだが、いくらなんでもパロディが多すぎたのだ。
きっとアニバーサリーイヤーならではのお祭り騒ぎ感やケロロらしさを楽しんでもらうため、これでもかという量のパロディを盛り込んだのだろう。しかし、本筋とは関係のないパロディが多すぎると、肝心のストーリーへの没入感が薄れてしまう。制作サイドが視聴者を楽しませようとしたあまり、観客を冷めさせてしまうという真逆の効果を発揮してしまったのだ。
また、『ケロロ軍曹』アニメシリーズの特徴として、「ナレーション」の存在がある。このナレーションは非常に役割が多く、あらすじだけでなく、状況説明やツッコミ役を担当してきた。これまでナレーションを務めてきたのは、クレヨンしんちゃんの野原ひろし役で知られた藤原啓治さん。残念ながら亡くなられているため、本作への登場は叶わなかった。その結果、福田監督作品に多数参加している「福田組」の一員である、お笑いコンビ・シソンヌの長谷川さんが担当することに。
詳細は後述するが、このナレーションの存在も、全体の評価に大きな影を落とす要因となった。
『ケロロ軍曹』だけでなく、パロディ元に対するリスペクトも欠けている
筆者は心からケロロファンに同情してしまったのだが、本作では「このキャラクターはこんなこと言わない」「性格的にこの言動はおかしい」といったシーンが目立つ。細かい部分を指摘するのはナンセンスだと感じる人もいるかもしれないが、これはアニバーサリー映画でもある。たとえ「細かすぎる」と言われようとも、よりリスペクトが必要なタイミングだったはずだ。

