その紙袋の中身が、次の料理、「弘子さんの焼き栗」だった。先程の女性は弘子さんだったようだ。ホクホクの焼き栗は温かく、ほっくりとしておいしい。次は羽後長戸呂駅に停車。そこで「昭子さんのご飯」が運びこまれた。
なるほど! と理解した。列車内に調理場やストック場はない。農家のお母さんたちが家で調理をして、列車が来る時間に合わせて料理を最寄り駅まで持ってきてくれる。そのため、どれも作りたてで温かいのだ。
おしながきには6人の農家のお母さんたちの名前。つまりシェフが6人いるようなものだ。そして列車が、それぞれの調理場(駅)に停車していくのだ。なんと画期的なシステムだろう! と感心した。
ちなみにご飯は栗ご飯だった。その時あるものを使うので、変わったりもするそうだ。
次は「勝子さんのおかず」。おかず、とだけ表記されていて、いったい何を食べさせてもらえるのかわからない。
観光列車は事前にメニューがわかるものがほとんどだが、ここにはそれがなかった。もうワクワクしかない。これは通常の観光列車では、味わえない興奮だ。
食べ終わるのがもったいない
「勝子さんのおかず」は松葉駅で積み込み。仕事を終えた勝子さんは、ホームから手を振って見送ってくれる。もちろんこちらも振り返す。こういうやりとりも楽しい。
車内では農家のお母さんたちが、マイクでおかずの説明を始めたので、慌てて書きとめる。いちじくの甘露煮、ごぼうの胡麻和え、きのこ醤油煮、かぼちゃのサラダ、大根などの煮物、揚げ出し豆腐に鶏そぼろ。一見素朴なおかずは、どれも手が込んでいた。
上桧木内駅では「富士美さんの寒天」、比立内駅では「木村さんの焼き芋」が積み込まれた。すべてのものがひとつひとつおいしく、食べ終わるのがもったいなかった。作っている人の顔も知れるのがまたよい。これはリピート確実の列車となった。
終点の阿仁合駅に到着した。ほとんどの人は次に反対方面から来る列車で角館に戻っていく。

