「学校ごとの差もあるし、同じ学校の中でも学年や先生によって違う。ICT支援員がいるかどうかも違うし、ネットワーク環境も違う。いろんな格差が重なり合っているんです」
長年現場を見続けてきた五十嵐氏は、この複雑な状況を「4次元の格差」と表現する。
有識者や視察に訪れた人が目にするのは、自治体が「見せたい」と考える学校や授業であることが多い。ICTを積極的に活用し、子どもたちの学びを広げている教員の実践が紹介されるケースも少なくない。
しかし、その学校全体が同じようにICTを活用しているとは限らない。五十嵐氏によれば、同じ学校の中でも学級や教員によって活用状況には大きな差が見られ、端末をほとんど活用していない学級が存在することは珍しくないという。
「ICTを使わないこと自体が悪いとは思いません。ただ、『クラスが落ち着いていないから』を理由に、目の前の子どもにとって最良の取り組みを考えず、慣れたやり方に逃げてしまうのは違う。モデル校が見せるような“落ち着いた教室を前提にした使い方”にしばられず、多様な子どもがいる教室でICTの体験をどうデザインするか――そこが大切なんです」
もっとも五十嵐氏は、「ICT活用の格差」を単純に教員の努力不足や意欲の問題として片づけることにも違和感を覚えるという。活用が進まない背景には、教員個人の姿勢だけでは説明できない、複雑な構造があるからだ。
学校間の違いを生む大きな要因の1つが、管理職の存在である。校長がICT活用の意義を理解し、ほかの教員に参考になりそうな活用をしている教員を校内研修の講師に立てたり、実践を共有したりする学校では、突出した実践でなくても「毎日端末に触る」文化が徐々に広がっていく。
また、DX推進校やパイロット校に指定された学校では、自治体の方針として活用を進めざるを得ないケースもある。一方で、管理職自身がICT活用に自信を持てず、新しい取り組みに慎重になる学校では、活用が進みにくい。
ICT支援員は「ICTと教育をつなぐ通訳」の仕事
では、このような格差を埋めるために必要なものは何なのか。五十嵐氏は、そのカギを握る存在として、ICT支援員を挙げる。
ICT支援員の本当の役割は、多くの人がイメージする「パソコンに詳しい人」ではない。

