だからこそ津坂氏はNetflixを引き合いに出し、「1年間を通じた22話のドラマ」にすると意気込む。華がある選手の活躍だけでなく、ライバルとの闘い、ランキング争い、若手の成長、ベテランの復活など、シーズン全体を1つの物語として発信できれば、ファンは次戦も見たくなる。
これは従来の大会運営という発想ではなく、「コンテンツ経営」という発想への転換ともいえる。そのためJ-Tourでは今後、試合結果だけでなく、選手の練習風景や人柄、データ、ストーリーなども積極的にネット発信し、YouTubeやSNSなどデジタルメディアを活用したファンづくりを進める構想を描く。
男子ツアーの価値を上げる
当然ながらスポーツビジネスに特効薬はなく、J-Tourが設立されたからといって、男子ツアーがすぐに再生できるわけではない。津坂氏自身も「成果が見えるまでには最低でも10年は必要」と長期戦を覚悟するものの、すでに一部では改革が始まっている。
例えば、6月4日から4日間にわたって行われたBMW日本ゴルフツアー選手権森ビルカップでは、会場となった宍戸ヒルズカントリークラブ(茨城県)でトーナメントで使用しないコースを活用し、「かさまスポーツ&フードフェス」を開催。20台を超えるキッチンカー、子ども向けスポーツ体験、夜には花火大会を実施し、午後からは観戦を無料にするなどして、「ゴルフを見る」だけでなく、楽しめるイベントへと進化させている。
こうした地域と一体になった取り組みは、津坂氏が掲げる「スポーツをエンターテインメントとして届ける」から着想を得ている。
男子ツアーが復活できるかどうかは、競技の価値をゴルフファン、スポンサー企業、地域社会へどう届け、新しいファンを生み出せるかにかかっている。日本男子ツアーは1973年の創設から半世紀余りを経て、大きな転換点を迎えた。
J-Tourが目指すのは、男子ツアーを「競技」から「成長するスポーツ産業」へ進化させること。成功すれば恩恵は選手だけでなく、スポンサー企業、ゴルフ場、練習場、ゴルフ用品メーカーといったゴルフ産業全体へ広がる可能性もある。
2027年から本格的に始動するJ-Tour、日本男子ツアーは今、次の50年へ向けた第1打を放った。
■一般社団法人日本ゴルフツアー機構(JGTO)
■日本産業推進機構(NSSK)

