相槌を打っていると、彼は続けた。
「日本と中国はごたごたしているけど、あれは政府の問題で私たちの間には全く関係ないよ」
こちらから何も聞かないのに、初っ端から日中関係の話をするのは、気遣ってくれているのだろうか。
列車は満席で、劉さんは「いつもは空いているんだけど。今日は窮屈だなあ」と立ち上がってどこかに行った。しばらくすると戻ってきて、「食堂車が空いてるから、あなたもおいでよ」と手招きした。隣の席の客に話しかけるのは中国あるあるだが、劉さんは日本人の私が戸惑うほどフレンドリー。
食堂車でお菓子を食べながら、いろいろな話をした。劉さんのお気に入りの旅行先は関西。特に神戸の街並みが好きで、朝ごはんがおいしいホテルを定宿にしている。6月の目的地も関西だが、足を延ばして和歌山の熊野古道と吉野山を巡るという。
「東京ももちろん行ったことがあるけど、私は日本の静かな場所を歩くのが好きなんだ。吉野山は2度目だよ」
関西以外のお勧めの旅行先を聞かれ、ついでに連絡先を交換した。会話から漏れ出る視野の広さからうすうすと察していたが、名前や雑談に出てきた経歴をもとに、こっそりスマートフォンで調べてみたところ、劉さんは外資系大企業のかなり上位の幹部だった。
「あなた、思った通りエリートなんですね」とスマホの画面を見せたら、「最近のAIはすごいな」と笑い、「私は新卒で勤めた国有企業で日本の技術を学んだんだよ」と、追加情報を教えてくれた。
国際的な経験がある知識層は自分の判断軸を持っている。それは以前から言われてきたことだが、実際に体感するとほっとする。
中国随一の親日都市・大連を訪ねて
最後に尋ねた大連は旧満州という歴史的背景に加え、1990年代から日本企業の進出が進んだこともあり、中国随一の親日都市だ。2010年代前半に尖閣諸島を巡り日中関係が悪化し、各地で反日デモが起きた際も大連は通常運転だった。
ただ、日本企業の撤退が進み、両国関係も以前ほど強固ではなくなったとも聞く。

