一方で、地域移行には大きな課題もある。自治体が指導者を募集しても、なかなか人が集まらないのだ。実際、スポーツ庁・文化庁の「部活動改革の取組状況に関する調査」でも、地域クラブ活動の課題として「指導者の量の確保」が挙げられている。
部活動には練習指導に加え、練習場所の予約、スケジュール連絡、会計、保護者対応、研修受講など、膨大な業務が付随する。
小坂さんが勤務する自治体では、教員の部活動指導にかかる手当は時間換算で900円程度、一般の外部指導者には1時間あたり1600円程度の謝金が用意されているというが、小坂さんは「全体的な業務負担を考慮すると、割に合わない」と断言する。
部活動の地域展開は、2023〜25年を改革推進期間と位置付け運動部・文化部ともに休日の部活動を地域に移行してきた。26年からは改革実行期間とし、今後は平日の部活動も地域に移行される予定だ。ただ、実際の進捗はまだ限定的だ。
スポーツ庁・文化庁の調査では、24年度実績で地域展開に取り組んでいる部活動は、休日で8.5%、平日では1.9%にとどまる。26年度には休日で30.4%、平日では8.7%まで広がる見込みとされるが、全面的な移行にはなお時間を要するのが実情だ。
担い手が見つからなければ教員の負担は変わらない
小坂さんの現在の勤務校では、当初はすべての部活動を地域に移行する予定だった。しかし、実際に移行できるのは一部のみで、受け皿が見つからない部活は、これまで通り教員が顧問を務めるという。
地域移行が検討され始めた当初、小坂さんが勤務する自治体では、教員に「自分の専門種目なら部活指導をやるか」「専門外でもやるか」「やりたくないか」を尋ねるアンケートが実施された。小坂さんの勤務校では、「やる」と答えた教員が3割、「やりたくない」と答えた教員が7割だったという。しかし、その後はアンケートすら取られなくなった。
「地域に移行できない部活は学校で続ける、というのが決定事項になっています。顧問を断ることは、やろうと思えばできるのかもしれません。でも、3人体制で顧問をしている部活で1人が抜けたら、残り2人に負担がいく。その2人と職員室で顔を合わせたときに平然としていられるか。最後は良心との闘いになります」
部活動は、生徒との強い絆を生み、人生の糧になる体験を与える機会にもなる。小坂さん自身、その価値を誰よりも知っている。だが、その価値が、教員の家庭生活や教科指導を犠牲にする形で成り立ってよいのか。
「部活動を地域に移行する方針そのものは良いと思います。でも、担い手が見つからなければ、結局、教員の負担は変わりません。このままでは地域移行は進まないのではないかと思います」
部活から多くを学んだ生徒がいる。部活に人生をかけた教員がいる。一方で、時間外勤務や家庭へのしわ寄せといった「負」の側面も忘れてはならない。地域移行を本気で進めるなら、制度の「理想」と教育現場の「現実」のギャップを埋める必要がある。



