冬の川は水が冷たい。上田さんは、「慣れていますから」と言う。自然の川を使った川ざらしは全国でも珍しいそうだ。通常は工房内の設備で洗うことが多い中、横野川の清流を使うことが横野和紙ならではの特徴だという。
水につけ、干す。そして、50年前から使用している器具で叩く。漉く。漉いた紙を干す。最後に、裁断する。その工程のほぼすべてが手作業で行われる。
どれか一つが欠けたら和紙は作れない
昭和30年代までは、上田手漉和紙工場のある横野地区のほとんどの家が紙に関する仕事に携わっていた。金箔の需要減少に伴い、かつてはこの地区に6軒あった手漉和紙工房も、現在は1軒になった。
「ミツマタを生産する農家さんも、手漉和紙づくりの道具を作る職人さんも減っています。家業のことより、そちらのほうが心配なんです」
上田さんが和紙を漉くのに欠かせない簀桁。その竹を編んだ部分を作れる職人は、いまや日本に数人しかいない。原料のミツマタを育てる農家も高齢化が進む。どこか一点が欠けただけで、400年の金箔は支えを失う。

