機械でも、箔合紙を作ることは可能だ。だが、金沢の伝統工芸品「縁付金箔」を名乗るための基準として「岡山県津山地区で手漉きで作られる箔合紙を使用すること」との指定があるという。
つまりは、金沢の伝統工芸品を存続させるには、上田さんが和紙を作り続けないとならないのだ。
需要に供給が追いついていない
「新規のお客さんから『こんな和紙は作れますか?』と、たびたびご依頼をいただきます。非常にありがたいのですが、納品まで数カ月待っていただいている状態なんです」
1日に300枚。上田さんは、たった1人で和紙を漉く。需要に供給が追いついていない状態なのだ。国内需要は減少しているが、海外からの需要が伸びている。売り上げのかなりの割合が海外へ輸出されているという。ドイツやカナダなどの芸術家が、エッチングやアート作品、古本の修復に使っているそうだ。
紙を漉く以外の仕事は、実母や妻も手伝う。2020年には、実父である6代目の上田繁男さんが岡山県指定重要無形文化財に認定された。父親が2024年に亡くなってからは3人体制だ。
上田さんは、昔ながらの製法と道具で和紙を作り続ける。0.03ミリの箔合紙はとても薄いが、手で触れるとふわっとしている。紙の表面に空気が通ることで、上に乗せる金箔が浮き、繊細な金箔を傷つけない。
ちょうど両腕を広げた幅の簀桁(すけた)と呼ばれる道具をゆする。水を張った漉き槽から「ちゃっぽん、ちゃっぽん」と軽やかな水音が響く。

