控訴人の一人で「椿台」に住む多田恵一さんは「メガソーラーで森を破壊するとはいったいどういうことか、と思ったのが私の出発点。木があって森があって細菌類をはじめ命の循環がある。それを壊すほどのことをしていいのか。今まで以上の雨があった時にこのメガソーラーは本当にもつのか(土石流を引き起こさないのか)と、不安にかられました。判決はその点を見事に突いてくれました」と静かに語った。
原告・控訴人側の理論構築を支えたのは、「平群のメガソーラーを考える会」代表世話人の須藤啓二さん。一級土木施工管理技士の資格を持ち、調整池の構造や容量などにも詳しい。須藤さんは言葉に力を込めた。「3回の土砂流出事故があったとはいえ、死傷者が出たわけではない。ですがここまで踏み込んだ判決が出たということは、住民に環境や安全を守る権利があることを認めてくれたということです」。
平群のメガソーラーと国・自治体の規制強化
平群のメガソーラーは13年3月にFIT制度による事業認定を受けている。メガソーラー開発の草創期の案件のひとつといえる。平群のメガソーラーの原告住民の弁護団はしばしば、「今同じような開発をしようとしても到底許可されないだろう」と言う。
どういうことか。市町や都道府県は住民の声に押される形で条例を次々に設置した。21年以降には、より規制色の強い条例ができた。また20年4月施行の政令改正により、国の環境アセスメント制度の対象にメガソーラーが加えられた。こうした動きは都道府県の環境アセス条例にも及んだ。
一方、21年7月に発生した静岡県熱海市の土石流災害は、山の上の盛り土など造成工事のあり方に警鐘を鳴らした。その結果、盛り土規制法が作られ、23年5月に施行された。林地開発許可制度の見直しも始まった。
平群のメガソーラー問題の経緯を、国・自治体の動きを含めて表にまとめた。改めて、平群をはじめ全国の住民が声を挙げ、行動を起こしたことが、国と自治体の行政を動かしてきたとわかる。

北海道・釧路湿原のメガソーラー開発をめぐる著名人の発言や動画がSNSにより広まったことに端を発し、政府は25年12月、メガソーラー対策パッケージをまとめた。新規事業を対象に27年度からFIT制度が廃止されるが、制度発足直後に認定された平群のメガソーラーはその対象外だ。
今回の大阪高裁判決が確定すれば、林地開発許可が取り消され、工事は中断し、認定も取り消される。ただ被告の奈良県が上告した場合には、ただちにそうした展開にはならないだろう。
原告住民と弁護団は、事業者に対して事業からの撤退を求めるとともに、奈良県に上告しないよう求める声明を出した。
住民は事業者に対して建設工事の差し止めを求めた民事訴訟、奈良県を相手取った行政訴訟と2つの裁判を起こした。大阪高裁では2つの裁判は別々に行われ、差し止め訴訟は続いている。
18日、法廷に奈良県の担当者や弁護士の姿はなかった。奈良県に判決の受け止めと今後の対応を尋ねた。「判決文が届いていないのでコメントを差し控えます」とだけ書かれた「高裁判決を受けての奈良県コメント」が送られてきた。今後の国、県、町の対応が注目される。

