この点に関して、筆者は、まったく違った考えをしています。補助金ビジネスには逆風だった生成AIの普及は、大手ファームのビジネスには強烈な追い風になると思います。
現在の大手ファームの問題は、フィー(報酬)があまりにも高すぎることです。コンサルタント1人あたり月300万~800万円のフィーを設定するので、プロジェクト全体のフィーはちょっとした市場調査で数千万円、全社の経営改革だと数億円から数十億円に達します。
そのため大手ファームを利用するのは、金満の大手企業やコスト意識が低い自治体に限られ、顧客層があまり広がっていません。順調そうに見える大手ファームですが、実は限られたパイを巡って熾烈な受注競争を繰り広げているのです。
この状況が、生成AIで一変します。現在、大手ファームは、大量の若手コンサルタント(社内ではリサーチャーという役職名)を採用し、調査・分析の作業を担当させています。この作業が生成AIにどんどん置き換わっていきます。
すると、若手コンサルタントが不要になり、採用抑制・リストラが始まります。アメリカの大手ファーム、アクセンチュアは、すでに全世界で1万人以上の従業員をリストラしています。リストラで従業員数が2分の1、3分の1になれば、コストが劇的に低下し、今よりはるかに低いフィーを設定できるようになります。フィーが下がれば、これまで価格面から敬遠していた中堅企業が気軽に大手ファームを利用するようになります。顧客層が一気に広がり、市場規模は現在の数倍、数十倍になるでしょう。
つまり、生成AIによって、(補助金ビジネス以外の)コンサルティング市場が急拡大し、大手ファームに黄金時代が訪れる可能性があるということです。
新卒では大手ファームに入社しないほうが賢明
ところで、近年、東大・京大などトップ大学の学生の就職先として、大手ファームが人気を集めています。東京大学新聞社によると、東大生の民間企業の就職実績(2024年度)で、アクセンチュア日本法人が学部卒業者で2位、大学院修了者で1位でした。大手ファームの黄金時代が訪れたら、就職人気は変化するでしょうか。
市場が急拡大し、コンサルティング案件数が増えるので、大手ファームには営業やプロジェクトマネジメントを担う人材が必要になります。つまり、調査・分析を担う人材が減り、営業やプロジェクトマネジメントを担う人材が増える、という構図です。
現在、大手ファームでは、調査・分析を若手のリサーチャーが、プロジェクトマネジメントを中堅のマネジャーが、営業を幹部層のパートナーが担っています。こうした仕組みが変わらないとすれば、大手ファームは、新卒・第二新卒の採用を減らし、中堅・ベテランの中途採用を増やすはずです。特殊な技能を持たない、ただ地頭が良いだけという学生は、新卒で大手ファームに就職するのを避けたほうが賢明でしょう。

