ちなみに、みんながよく知っている柴犬の飼育数は約5万3000頭(※ジャパンケネルクラブによると、柴犬登録数は2025年は3598頭×柴犬平均寿命14.7年なので、5万2890頭と算出した)。つまり美濃柴犬の数は、柴犬の170分の1以下だから、いかに少ないかがわかるだろう。
ぼやぼやしていたら、ぼくたちの子孫はいなくなって、美濃柴犬というご当地犬が岐阜県から消えてしまう! ここは県民みんなで力を合わせなくてはならない。
そこで、結成されたのが、大垣養老高等学校の「美濃柴犬研究班」。学校で、ぼくたちの血統を未来につなぐため、美濃柴犬の繁殖をしながらいろんなことを勉強したり、研究したりするグループだ。少なくなった美濃柴犬を再び取り戻す、いわば美濃柴犬復活大作戦!
美濃柴犬の命をつないでいく
それは、とっても大切なことだけど、人間って勝手だなぁ…と、ぼくは思った。その昔、犬公方と呼ばれた将軍徳川綱吉は「生類憐みの令」を発令し、「動物を慈しみ、その命を尊べ」と動物の殺生を厳しく禁じて、犬をはじめとした動物を傷つけた人間に厳しい罰を下した。
それが、太平洋戦争になると、今度は真逆で、国は犬や猫を供出せよという命令を下した。人間の心ひとつで、ぼくたち犬の運命が天国から地獄に変わっちゃうなんて、もうこりごり、勘弁してほしいというのがぼくの本音だ。
でも、この学校にやってきて、ぼくの気持ちは、少し変わった。それは、戦争で亡くしてしまったぼくの多くのご先祖さまの分まで、ぼくたち美濃柴犬の命を未来につないで、幸せにしたいと、一所懸命になっている先生や生徒さんに出会ったからだ。
ぼくは、ここに来て、自分の使命をはっきりと感じた。
そう、ぼくは戦時下で生き延びた、美濃柴犬の子孫として、供出で亡くなっていったみんなの分まで、たくさんの命をつないでいくんだ! ぼくのきりっとした自慢の巻尾がプンプンゆれた。天国の、おじいちゃん、おばあちゃん、戦争で死んでしまった多くの美濃柴犬たちの期待がぼくにはかかっている――。
(取材協力/岐阜県立大垣養老高等学校、写真/浜田一男)


