東洋経済オンラインとは
ライフ #歌舞伎町の横顔

「ヤクザが密談し、風俗嬢が面接を…」 歌舞伎町のど真ん中で"業務マニュアル一切なし"の「眠らない喫茶店」に人が集うワケ

9分で読める
歌舞伎町 コーヒーショップクール
歌舞伎町の中心地で、“ほぼ24時間営業”を40年続ける「コーヒーショップクール」(撮影:梅谷秀司)
  • 肥沼 和之 フリーライター・ジャーナリスト
2/6 PAGES
3/6 PAGES
4/6 PAGES
5/6 PAGES
6/6 PAGES

コロナ禍でも、大きな経営判断を迫られた。行政から時短営業の要請があったが、24時間営業のクールにとって、受け入れると大打撃である。時短営業すれば協力金がもらえたが、店を維持するにはとても足りない。

自分やスタッフたちの生活のことを考え、悩んだ末にマスターが決めたのが、24時間営業を続けることだった。夜間はほかの店が営業していないため、クールの店内は満席。階段には入店を待つ行列ができていたと島田さんは話す。

コロナが収束し、平日の朝7~8時の1時間だけ店を閉めるようにしたが、金・土は今も24時間営業だ。

取材した日も多くの人でにぎわっていた(撮影:梅谷秀司)

これからも「お客さんの時間を止めたい」

クールが「眠らない喫茶店」であり続けることへの思いを、島田さんはこう説明する。

「昔は客引きのおじさんたちが、深夜にここで新聞を読みながら待機していたんです。歌舞伎町の人たちがいつでも来られるよう、開けておいてあげたい。そして、クールで過ごす間は、お客さんの時間を止めたいですね」

時間が止まる。それはまさに、常連客の石鍋さんが言った「ほかでは埋められない時間」のことではないか。人によって過ごし方はさまざまだが、誰もが「ほかでは埋められない時間」をクールで味わっている。

かつてはヤクザが、店内で指を詰めようと包丁を取り出し、島田さんが慌てて止めたことがあった。朝方に酔っぱらった女性が、スカートで大股開きになったところ下着を穿いておらず、ほかの客が唖然としていたこともあった。男女が別れ話で大ゲンカを始めたこともあった。

そんな事件簿もありつつ、40年以上、歌舞伎町にいる傾奇者(かぶきもの)たちをいつでも受け入れてきたクール。時代は変われど、眠らない街の人々の居場所として、日常としてあり続けるのだろう。

今日もクールには、コーヒーの香りや煙草の煙が、止まった時間の中を漂っている。

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ライフ

人気記事 HOT

※過去1週間以内の記事が対象