コロナ禍でも、大きな経営判断を迫られた。行政から時短営業の要請があったが、24時間営業のクールにとって、受け入れると大打撃である。時短営業すれば協力金がもらえたが、店を維持するにはとても足りない。
自分やスタッフたちの生活のことを考え、悩んだ末にマスターが決めたのが、24時間営業を続けることだった。夜間はほかの店が営業していないため、クールの店内は満席。階段には入店を待つ行列ができていたと島田さんは話す。
コロナが収束し、平日の朝7~8時の1時間だけ店を閉めるようにしたが、金・土は今も24時間営業だ。
これからも「お客さんの時間を止めたい」
クールが「眠らない喫茶店」であり続けることへの思いを、島田さんはこう説明する。
「昔は客引きのおじさんたちが、深夜にここで新聞を読みながら待機していたんです。歌舞伎町の人たちがいつでも来られるよう、開けておいてあげたい。そして、クールで過ごす間は、お客さんの時間を止めたいですね」
時間が止まる。それはまさに、常連客の石鍋さんが言った「ほかでは埋められない時間」のことではないか。人によって過ごし方はさまざまだが、誰もが「ほかでは埋められない時間」をクールで味わっている。
かつてはヤクザが、店内で指を詰めようと包丁を取り出し、島田さんが慌てて止めたことがあった。朝方に酔っぱらった女性が、スカートで大股開きになったところ下着を穿いておらず、ほかの客が唖然としていたこともあった。男女が別れ話で大ゲンカを始めたこともあった。
そんな事件簿もありつつ、40年以上、歌舞伎町にいる傾奇者(かぶきもの)たちをいつでも受け入れてきたクール。時代は変われど、眠らない街の人々の居場所として、日常としてあり続けるのだろう。
今日もクールには、コーヒーの香りや煙草の煙が、止まった時間の中を漂っている。

