東京ディズニーシーの中央に鎮座する火山からは、常に90℃以上の蒸気が噴出しています。
触れるともちろん大やけどしてしまいますので、ゲストが触れることのないよう厳重に管理されています。触れることができないので、蒸気の正確な温度はゲストにはわかりません。だとしたら、煙さえ出ていればいいのではないでしょうか。
これは、ごく一部のキャストだけが知るこだわりなのです。
ウォルト・ディズニーが定義した「一流のサービス」
東京ディズニーシーでアトラクションキャストの仕事をしていた私は、何でこんな無駄なことをするのだろうと思いました。熱い蒸気を出すには、もちろんコストがかかります。
ほとんどの人が気づかないことに、規模は小さいとはいえ経営資源を投入する意味があるのだろうか。それならば、もっと多くの人が気づく、アトラクションの機能向上や、フードの改善に使ったほうが効率的なのではないか――そう私は考えました。
そこで当時のトレーナーに質問したところ、「これこそがウォルト・ディズニーが考える一流のサービスなんだ」と教えてくれたのです。
ほとんどの人が気づかないだろう。しかし、それでもやる!――ここに、狂気とも言えるウォルト・ディズニーの哲学が宿っています。この「ほとんどの人が気づかないところにこそ価値を置く」という逆説的な姿勢こそが、ディズニーのサービスが合理性を超えた感動を生み出す根源なのです。
ウォルト・ディズニーは、サービスのレベルをきわめて明確に定義しました。これは、現代のコモディティー化したサービスに対する強烈なアンチテーゼとして光を放っています。
ウォルト・ディズニーは、サービスのレベルを「気づかれやすさ」という客観的な基準で分類したのです。
この定義を深く理解することが、沼るファン作りの第一歩です。

