教員の長時間労働をめぐる議論では、しばしば「残業時間の総量」が論点になります。しかし現場の教員に話を聞いていると、問題は単純な時間の長さだけではないことが見えてきます。むしろ深刻なのは、退勤しようとした時間帯にこそ、断れない依頼が次々と舞い込んでくるという時間構造の歪みです。
定時で帰るためのルールを整えても、その「定時」が訪れる瞬間に新しい依頼が発生する。結果として、教員にとって本来もっとも大切な業務であるはずの授業準備が、深夜の自宅作業へと押し出されていきます。
「定時で帰れない」のではなく「定時に依頼が来る」
文部科学省が公表した最新の働き方調査では、2024年度に時間外勤務が月45時間以下に収まった教員は、公立中学校で60.5%、小学校で77.8%、高校で72.6%にとどまっています(文部科学省 学校の働き方改革のための取組状況調査)。中学校が1番数値として低く、約4割の教員が国の上限指針を超えて働いていることになります。
ではなぜそんなことが起こっているのか? 僕が現場の先生方にお話を伺っていると、「残業しているという感覚すらないまま気づけば22時を回っている」と仰る先生が多いです。タスクが整理されたうえで定時を超えて働いているというより、退勤しようとしたまさにその時刻に、新しい仕事が割り込んでくる――そういう類いの長時間労働だと言います。

