「顔はアプリに載せていた写真とはやや違ったけど、誠実そうだったし、ちゃんとした会社で働いていたし……」
ならば、いったいなにが問題だったのだろう。
「自己紹介してすぐ、『いま住んでいる不動産は購入したものですが、立地が良いので売ることもできます。父親は亡くなっておりますが、母親は兄夫婦が面倒を見ることになっているので、同居や介護の心配はありません』って畳みかけられて」
ああ、それはしんどいね。
「カフェに入ったんですけど、それは彼に食べたいケーキがあったからなんです。『男1人では入りづらいから』と言ってて。うれしそうに写真撮って食べてて、いいことのはずなのに、なんかそれもしんどくて」
気が合う合わない以前のところで、彼女はつまずいてしまったらしい。
彼女のしんどさ=彼のしんどさ
察するに、彼女のしんどさは、彼のしんどさと同質だ。婚活市場において、不動産を所有していれば加点、介護が透けて見えるなら減点、男のくせに1人休日のカフェでケーキをつつくなんて、減点。でも彼女と一緒なら、OK。
そう感じているであろう彼のしんどさは、初デートのときはいつもより「普通め」の服を着て、ひっつめ髪を下ろし、普段より少し大人しく振る舞い、アプリのプロフィール欄に「趣味は料理」と、うそではないが本当でもないことを書いてしまう彼女のしんどさと背中合わせだ。私が過去に丸抱えしていた、いまもすべてを手放せたとは言えないしんどさとも。
条件だけで結婚相手を選べるタイプなら、彼女は彼を好ましく思ったかもしれない。でも、「ちゃんと恋愛したい」と思うから、条件ではない「なにか」に触れて恋に落ちたいから、条件だけで選ばれようとするこの男性に怖じ気づいてしまった。条件だけで選ばれようとしているのは、彼女も同じなのだけれど。

