一方で板倉氏は、競争促進による副作用にも言及した。EUで代替アプリストア『Setapp Mobile』が終了した際には、そこ経由で配布されたアプリが利用不能になる問題が発生。今後、ストア閉鎖によって購入済みコンテンツやサブスクリプションが失われるリスクが広がる可能性を指摘した。また、青少年保護や個人情報保護法改正への対応、アダルトコンテンツ規制など、従来アップルやGoogleが担ってきた法令・安全面のチェックを、代替ストア側がどこまで継続的に担えるのかにも疑問を呈した。
消費生活相談の現場から
全国消費生活相談員協会前理事長/顧問の増田悦子氏は、消費生活相談の現場から、スマホ新法に対してかなり慎重な見方を示した。
法の目的は競争環境を整え、消費者が多様なサービスを選べるようにすることだが、現実にはデジタルリテラシーが追いついていない消費者も多い。これまでスマートフォンは、一定の安全性が確保された環境として利用されてきたため、代替アプリストアや外部決済の増加が、消費者利益よりも混乱やリスクを生んでいると指摘する。
特に増田氏は、代替アプリストアの安全性を消費者自身が判断することは難しく、セキュリティやプライバシー確保のコストが最終的に消費者負担となるならば、価格低下のメリットも不明確になるとした。また、外部決済では、契約相手や問い合わせ先、返金・解約窓口が分かりにくくなり、トラブル時の対応が複雑化する懸念がある。リンクアウト先の表示条件がアプリ内表示と異なれば、SNS広告由来の定期購入トラブルと同じ構図ができかねない。
最後は、政策研究大学院大学の安田洋祐教授。
安田教授は、スマホ新法を「競争促進法」であると同時に、「ビジネスモデル変更法」でもあると整理した。特にアップルとGoogleへの影響が対称ではない点を指摘した。垂直統合型でApp Store手数料を主な収益源とするアップルにとっては、事業モデルそのものの変更を迫られる。一方、GoogleはAndroidのオープン性に加え、広告仲介という別の収益モデルも持つため、影響はアップルに対して大きくない。
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【消費者厚生は「アプリが安くなるか」だけではない】
