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なぜアメリカは台湾を信用しないのか――防衛予算攻防に透ける米中台の本音とアメリカが台湾に求める自衛の覚悟

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台湾で大規模な国防予算がようやく通過したが、その背景にはアメリカの圧力も?(写真:z1b/PIXTA)
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また、台湾はアメリカ主導の環太平洋合同演習(RIMPAC)など、多国間軍事演習にも正式参加していない。これについては、中国の強い反発を避ける狙いに加え、東南アジア諸国など一部参加国への配慮も背景にあると指摘されている。

その一方で、アメリカと台湾は「非公式かつ実務的」な軍事協力を着実に拡大している。例えば、アメリカ国内では、近年ミシガン州キャンプ・グレイリングなどで、アメリカ州兵と台湾軍による共同訓練が行われたと報じられている。

また、一部報道では、台湾本島周辺の離島地域などで、アメリカ特殊部隊関係者が訓練支援や助言活動を行っているとも伝えられている。

正式な同盟ではないが極めて深い軍事強力関係

このようにアメリカは、「正式同盟ではないが、実質的には極めて深い軍事協力関係」という曖昧な立場を維持しながら、中国への抑止力強化を進めていると言えるだろう。

アメリカとしては、台湾の政権を担う政党がどこであれ、「自らを防衛する強い意思」と、それを支える十分な国防予算を維持することを求めているとされる。

近年では、アメリカ政界や安全保障関係者の間から、台湾の国防費をGDP比5%程度まで引き上げるべきだとの声も出ている。また、アメリカは台湾に対し、法的な独立宣言によって中国を刺激するよりも、中国が容易に武力行使できないほどの防衛力と国際的結び付きを持つ、「事実上独立した存在」であり続けることを期待しているとの見方が強い。

その中で台湾は、民主主義体制と世界的なハイテク産業を支える重要拠点として位置づけられている。そのため、仮に国民党政権となった場合でも中国への過度な接近を避け、アメリカ主導の安全保障秩序から大きく逸脱しない限り、一定程度は受け入れるというのが、現在のアメリカ側の現実的な立場だと考えられている。

また、アメリカやヨーロッパ諸国の歴史的・法的認識においても、台湾の地位は極めて特殊なものとして扱われてきた。1952年のサンフランシスコ平和条約では、日本は台湾に対する主権を放棄したものの、その帰属先については明記されなかった。

このため、アメリカ政府は現在に至るまで、「台湾の最終的な主権問題について明確な立場を取らない」という政策を維持している。さらに、一部の欧米研究者や戦略論者の間では、台湾は単なる「中国の一部」という枠組みではなく、オランダ統治時代や日本統治時代など複雑な歴史を経て形成された、独自性の強い社会として認識されることも多い。

加えて、民主化以降の台湾は、東アジアにおける民主主義モデルの一つとして評価される場面も増えている。そのため欧米側では、台湾を中国大陸とは異なる政治的・社会的発展を遂げた存在として見る傾向も存在している。

アメリカにとって台湾は、日本や韓国のような正式な軍事同盟国ではない。一方で、インド太平洋戦略や先端半導体供給網、さらには対中抑止の観点から見ても、極めて重要な戦略的パートナーであることは間違いない。

その意味で台湾は、全面的に同盟化するには慎重さを要する一方、決して失うこともできない、極めて重要な存在として位置づけられていると言えるだろう。

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