アメリカは中国と国交を樹立する際、「台湾は中国の一部である」という中国側の立場を「認識(acknowledge)」した。しかし、それを正式に承認したわけではなく、同時に台湾の安全保障を一定程度支えるという複雑な立場を取った。
その結果、「中国が平和的手段を維持する限り、アメリカも台湾向け武器売却を抑制する」という1982年の米中共同コミュニケに基づく一種の均衡が形成された。
しかし、その後の中国軍拡によって、この前提は大きく変化したとされる。
崩れた米中関係の前提
2010年代以降、中国軍の急速な近代化により、台湾海峡の軍事バランスは中国側に有利な方向へ傾いた。これを受け、アメリカは台湾への武器供与について、量だけでなく質の面でも強化を進めるようになった。
さらに、ウクライナ戦争などの教訓から、高価な戦闘機や大型艦艇だけでなく、ドローン、移動式ミサイル、機雷など、「侵攻側に大きな損害を与えられる比較的低コストの兵器」の重要性が注目されている。
そのためアメリカは、台湾に対して非対称戦力を重視する方向へ防衛戦略を転換するよう強く促しているとされる。
アメリカとしては、「台湾による一方的な独立宣言」と「中国による武力統一」の双方を抑止することが基本方針であり、その均衡を維持するためには、台湾側に容易には攻略できない防衛力を持たせる必要があると考えているとみられる。
このように、アメリカは台湾に対して、日本や韓国などの同盟国に近い水準の安全保障支援を行っているようにも見える。しかし一方で、台湾、とくに国民党系の流れをくむ軍関係者に対しては、根強い警戒感を抱いているとも言われている。
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【台湾軍に対するアメリカの不満】
