今までは朝ピラテスに通い、好きなものを食べていた。同じくひとり暮らしをしている友人たちと海沿いを散歩したり、昼食を一緒に取ったりすることもあった。
現在は、以前の暮らしを取り戻すために、自分でできることをひとつずつ増やしている。
先日は、さくらんぼで梅干しを作ったのだという。スペインでは梅が手に入らないから、さくらんぼで代用する。スペイン生まれの孫たちの大好物なのだそうだ。しかし、本人が自由に食べられる日は、まだ遠い。
それでも政子さんは、この不自由な時間を、どこか人生の整理の時間として受け取っているようだった。
「やっと、整理する気になれた」
病を経て、政子さんの関心は、自分の人生をどう締めくくるかに向かっている。
「自分が生きてきた人生を、きれいにお掃除して、『ありがとうございました』って言って、お返ししたい」
人生は所有するものではなく、借りもの。政子さんは、そう考えているのだという。
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【「お借りしているのよ」】
