「彼がいつも見ててくれる。だから、寂しくないの」
寂しさはない、と政子さんは言い切る。ただ、いま静かに「堪えていること」があるのだという。
「ひとり暮らしの寂しさ」より、彼女が堪えていること
「病気をしてから食事制限しなきゃいけないし、それを娘にコントロールされることのほうが、嫌なの」
かつて日産自動車で通訳をしていたとき、正社員にならないかと請われても断った。「正社員になったら、自由に日本に帰れなくなるでしょう」と政子さん。
組織に属さず、人の上にも下にも立たない。誰かに自分の手綱を渡すことを、ずっと避けてきた。その彼女が、生まれて初めて、自分では選べない不自由のなかにいる。
「制限のある生活になって初めて、食べたいもののことばかり考えている自分に気づくの。恥ずかしいくらいにね」
元気なころには気づかなかった食い意地が、制限されたとたんに顔を出した。政子さんはそれを、笑い話のように話す。
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【人生の整理の時間】
