「年を取ったと感じること? ないのよ。それがいけないのね。だから、無理をしてしまうの。今回、体を壊したのは、いい経験だった。少しブレーキをかけることを、覚えなきゃいけなかったのね」
夢で、起こしに来た夫
夫を亡くしてから、6年近くが経った。政子さんは、「常に、夫が一緒にいてくれてる感じがする」という。
生前の夫は、考えすぎて自分の中に入り込んでしまうことがある、難しさを抱えた人だった。だが決めたことは最後までやり遂げる。晩年、病床で夫はこう言った。
「僕は全部やることをやった、後悔はない。君はまだ元気だから、楽しんでおいで。もうダメだと思ったら迎えに来るから」
その約束が、今も続いているように政子さんには感じられる。
何かをしているとき、ふと、そばに夫がいる気がする。気づけば、ひとりで夫と話していることもある。
一度、こんなことがあった。
朝に約束があって、早起きをしなければならなかった日。寝坊しかけた政子さんを、夢の中で、夫が起こしに来た。
「若いころの彼でね。私が初めて編んだセーターを着てたの。『起きないと、バスに乗り遅れるよ』って」
はっと目を覚ますと、本当に寝坊をする寸前になっていた。
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【だから、寂しくない】
