「ダメだわ。あんな状態を娘に見られたら、怒られてしまう。片付けてからじゃないと」
ここで死ねるか、と思った。「生きたい」ではなく「片付けたい」という感情が、体の中から湧いてきた。それから3カ月後、政子さんは退院した。
だが、退院した彼女を待っていたのは、今までとはまったく違う自分だった。
自分ひとりで靴下も履けない
3カ月の入院生活で、政子さんの体はすっかり変わってしまった。
「ずっと寝たきりだったから、筋力が落ちちゃって。自分ひとりで靴下を履くこともできないから、孫に履かせてもらうの。今まで大きな病気をしたことなかったから、こんな経験、初めてだったわ」
足に力が入らないから、台所に立つ時間も短くなった。階段は一段ずつ、ゆっくり手すりを頼りに上がる。政子さんは、今までひとりでできていたことができない自分を、淡々と受け入れている。「新しい発見があって面白い」とも言っていた。
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【いい経験だった】
