東洋経済オンラインとは
政治・経済・投資

「エプスタイン事件」解明のカギを握る…1冊の黒い手帳が思い起こさせる、松本清張が描いた《昭和の傑作サスペンス》

9分で読める
エプスタインが遺した「ブラックブック」が思い起こさせる昭和の名作とは(写真:tetsuro125/PIXTA)
  • 小林 雅一 KDDI総合研究所リサーチフェロー、情報セキュリティ大学院大学客員准教授
2/5 PAGES

場所と時代、性別こそ違うが、元子の手口はエプスタインのそれと似ている。

実はエプスタインも生前「ブラックブック」と呼ばれる手帳を所持していた。彼の愛人にして相棒のギレーヌ・マクスウェルが2003年、エプスタインの50歳の誕生日に贈ったものだ。この豪華な一冊は、まさに黒い革で装丁された「黒革の手帳」であった。

このブラックブックこそ、エプスタインが長年かけて構築した「世界で最も強力な闇の連絡先リスト」と言われている。そこには優に1000人以上の世界的な権力者・著名人らの「氏名、電話番号、メール・アドレス」などが記載されているという。

数えきれないほどの少女たちを性的虐待した加害者という許し難い凶悪犯・変質者ではあるが、エプスタインもまた元子同様、致命的な秘密(弱み)を握られた、これら政財界の大物たちをときに脅迫・恐喝しながら「裏(闇)の世界」をのしあがっていったのだ。

「エプスタイン文書」とは何なのか

エプスタインの性犯罪ネットワークを捜査する過程で、検察やFBIなどの捜査官はこの「ブラックブック」をはじめ、エプスタインの自家用ジェット(ロリータ・エクスプレス)の搭乗者記録、関係者との間でやりとりされたメール、銀行取引記録、被害者や目撃者の証言、さらには被害者や加害者などが撮影されている18万点以上の画像や2000本以上の動画など、ありとあらゆる情報を収集していった。

いわゆる「エプスタイン文書(Epstein Files)」とは、この膨大な捜査資料や(逮捕されたマクスウェル関連を含む)裁判資料の総称である(これらの資料は全て電子化され、米司法省のウェブ・サイト:https://www.justice.gov/epstein?utm_source=chatgpt.com から、18歳以上の成人なら誰でも閲覧できるようになっている)。

これらエプスタイン文書は全体で約650万ページに及び、それらを垂直に積み上げると約650メートル(東京タワーの約2倍)に達すると言われる。が、当初公開されたのは、文書全体から見ればほんの僅かに過ぎなかった。

まず2017年から2024年までの間に、情報公開法(FOIA)に基づいたジャーナリストらの粘り強い請求により、少しずつ捜査資料が開示されていった。

次ページが続きます:
【まずは1万ページ弱が公開されたが…】

3/5 PAGES
4/5 PAGES
5/5 PAGES

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

政治・経済・投資

人気記事 HOT

※過去1週間以内の記事が対象