損害賠償の支払いを求める訴訟において、遺族側は、引率教員には、「修学旅行で訪れる場所及びその周辺に危険箇所がないかを事前に調査し、危険箇所があるときはこれを生徒に告知し、そこへ近づかないよう指導する義務」があるとする。にもかかわらず、この学校の教員は、事前調査を怠り、リーフカレントの危険性を生徒に告知していなかったと非難している。
判決は遺族の主張を支持し、現地調査や危険の告知を尽くすべきだったと判断している。例えば、事前調査は、「市販の旅行雑誌を読み、旅行業者の担当者から情報提供を受けたというだけでは、調査を尽くした」とは言えず、「海上保安部等の関係官公署に問合せるなどして、危険箇所の有無及び沖縄で海に入る場合の注意点等の情報を収集した上」で、十分な実地踏査を行うべきであったとされている。
生徒の命を守るため、安全管理の徹底を
今回の辺野古転覆事故については、原因等詳細はなお調査中であり、拙速な判断は避けなければならない。だが、先に触れた通知をはじめ「修学旅行における安全確保の徹底について」(昭和63年3月31日付け文初高第139号文部事務次官通達)など、文部科学省は校外活動に伴う危険の把握、関係事業者の安全管理体制の確認、引率体制の点検などを繰り返し求めている。
そうである以上、学校側には、乗船の可否を含め、活動の安全性について主体的に判断すべき責任があったのではないかが問われる可能性がある。
なお報道によれば、運航団体は旅客運送の登録を受けておらず旅客名簿も作成していなかったほか、船舶の手配は学校が旅行会社を介さず独自に行っていたとされる。こうした事情は学校側の安全確認が十分であったかを検証する上で重要な要素である。
ともあれ、修学旅行が教育活動の一環である以上、事前調査等は、他人任せにすることなく、学校が自らの責任において行うべきものと考えられる。にもかかわらず、この学校では、危険箇所等に係る情報収集を運航団体など外部に委ね、学校自らが主体的に確認すべき責任を十分に果たしていなかった可能性がある。
体験活動を取り入れた修学旅行を企画するのであれば、活動に伴うリスクを勘案し、自ら情報収集を行う姿勢が強く求められる。波浪注意報が出されている中での出港判断への関与の有無、教員が乗船しないという判断の妥当性など、今後、学校側の主体性が厳しくチェックされることになるだろう。
小中高の区別を問わず、学校側には、「平常から道徳教育や生徒指導の充実に努め、特に事前の安全指導の徹底を図る」、「宿泊施設の選定にあたっては、その周辺の環境について、教育的に十分検討するとともに、安全、保健衛生についても特に配慮する」、「気象状況等に十分注意し、天候その他の異変の際は、予定を変更するなど、臨機応変の措置をとる」など、児童・生徒の安全確保に向けた万全の体制を構築することが求められている(文部省初等中等教育局長通達「小学校、中学校、高等学校等の遠足・修学旅行について」昭和 43 年10月 2日付け文初中第450号、一部表記を調整)。
事故の可能性が増す「非日常」の場においては、外部の機関や業者に全てを委ねるのではなく、学校自身が主体となってリスクを予見し、生徒の命を守り抜くための万全な安全管理体制を構築することこそが、教育活動における重要な責務だ。



