ロシアがイランから輸入したシャヘドをウクライナ戦に最初に投入したのは、2022年の侵攻直後のことだった。とがった機首と三角翼を持ち、小型飛行機のような形をしたこの機体は、エンジンの甲高い作動音ですぐに知られるようになり、「モペット(原付バイク)」のあだ名がついた。
現在、ロシアは自国の工場で月に数千機を生産しており、長距離ドローン部隊の大部分をこれが占めている。
ワシントンに本拠を置くシンクタンク、新米国安全保障センターのシニアフェロー、サミュエル・ベンデット氏は「ロシアはこうした無人機をますます増産しており、ウクライナにとって存亡の危機となりつつある」と指摘。「撃ち落とすことは最重要課題だ」と述べた。
米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)は昨年、ロシアのシャヘド型ドローンの製造費を1機あたり3万5000ドル(約560万円)と推計した。
これに対し、ウクライナの迎撃ドローンの価格はメーカーによれば1機あたり数千ドルで、最も安いモデルは1500ドル未満だ。3Dプリンターで成形したプラスチック製のドーム内に爆薬を収め、4基の小型プロペラで駆動するモデルが一般的だ。
前線で活動するウクライナの迎撃部隊にとって、現場の任務はもどかしいことが多い。
シャヘドがレーダーに映ってから射程外に出るまで、兵士に与えられた時間は数分しかない。点に向かって迎撃機を誘導し、ドローンのカメラ越しにシャヘドを目視で捉えたうえで標的に突入させ、爆発させなければならない。
標的を捕捉できるかどうかは天候次第だ。「迎撃機を10回発進した夜に、シャヘドを1機も見つけられないこともあった」とボリス氏は語る。
同氏は侵攻開始後、テレビ局の仕事を辞めて入隊し、現在は第420無人システム大隊で迎撃部隊3班からなる小隊を率いている。
3月のある寒い夜、ハルキウ州の兵士たちは霧のため任務の中断を余儀なくされた。ドローンの搭載カメラで何も見えなかったからだ。フェドロフ氏は、悪天候下でも機能する自動誘導システムを開発中だと語った。
「シャヘドを打ち破る」
ロシアのドローン攻撃は一晩に500機を超えることもあり、ウクライナは都市や送電網、兵器工場をできるだけ安価に守る方法を急ピッチで編み出してきた。電子戦装備や迎撃ドローン、重機関銃を搭載したピックアップトラック、ヘリコプター、戦闘機などを組み合わせた多層的な防空体制を全土に敷いている。
空軍指揮官のチェレバシェンコ氏は、軍は昨年夏と冬のロシアによるドローン攻撃から得た教訓を生かしてシャヘドを打ち破ろうとしていると述べ、「我々にはそれを成し遂げる絶好の機会がある」と語った。同氏によると、迎撃ドローンは現在ロシアのシャヘド型兵器や他の長距離攻撃UAVの40%を撃墜しており、迎撃率は冬の約25%から上昇している。
空軍報道官のユーリー・イグナト大佐によると、シャヘドを妨害する電子戦システムの効果はまちまちだが、夜によってはほぼ半分を無力化できるという。また、F16戦闘機も投入されており、1機で一晩にシャヘドを最大10機撃墜できるという。
チェレバシェンコ氏は、最大の課題の一つはロシアが人工知能(AI)を使って新たな進入経路や飛行計画を編み出していることで、ウクライナ側は対応に追われている。
また、複数のドローンが互いに信号中継機として機能し、120キロを超える格子状のネットワークを形成する「メッシュネットワーク」の活用にも触れた。これにより、ロシア側はウクライナの航法妨害を回避できるという。
一方、ウクライナ側の迎撃の取り組みは意外な分野からも追い風を受けている。「リモートワーク」だ。
チェレバシェンコ氏によると、トップクラスのパイロットの一部はネット回線を利用して国内の複数地点で迎撃機を同時に遠隔操作し、映像フィードを瞬時に切り替えながら飛行させている。地上要員がドローンや信号アンテナの設置を担う必要があるが、パイロット自身はどこにいても迎撃作戦に参加できるという。
