夜行列車での移動がほとんどだったのは北海道だ。移動でなく、単純に宿代わりにすることもよくあった。例えば夜に上りの夜行急行に乗り、途中の駅で反対方向の列車に乗り換えて出発地と同じ駅に戻ってくるのだ。周遊券であれば、このような利用も問題なくできた。
とくに記憶に残っている夜行列車の1つは、急行「大雪5号」である。「大雪」は札幌―網走間を結ぶ列車で、ほとんどは気動車による昼行列車だったが客車による夜行もあった。それが「大雪5号」だ。
「大雪5号」は寝台車やグリーン車、座席車を連ねた豪華な客車編成だったが、急行として走るのは札幌―北見間で、北見―網走間は同じ編成のまま朝の普通列車としてC58形SLが牽引して走り、鉄道ファンからは「大雪くずれ」と呼ばれた。筆者も、SLが引く堂々たる客車編成だったこの列車を追いかけた。
実はこの列車は、映画『男はつらいよ』シリーズの第11作『男はつらいよ 寅次郎忘れな草』(1973年松竹・山田洋次監督)で主人公の寅さんとマドンナのリリーが初めて出会う舞台でもある。『寅さん』ファンの筆者には、そんなことも思い出深い要素の1つである。
普通列車にも寝台車があった
「寝台車」といえば、今では冒頭に挙げた「サンライズ」やブルートレインなど、特急列車を思い起こす人が多いであろう。だが、かつては普通列車にも寝台車を連結した夜行があった。北海道の「からまつ」や紀勢本線の「はやたま」などである。普通列車なのに愛称までついていたのは、指定席予約の都合だった。
山陰本線にも京都―出雲市間を結ぶ夜行普通列車があった。その名も「山陰」である。筆者はこの列車の末期である1984年、雑誌の取材で乗車した。当時でも、もはやこのような普通列車の寝台を利用する“酔狂”な客はほとんどおらず、車内はガラガラだった記憶がある。
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【普通「山陰」懐かしの旅】
