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水俣病70年、多数の利益のために少数が犠牲となった歴史が問うているもの/事件の核心は解明されぬまま残っている

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  • 高峰 武 熊本学園大学招聘教授、元熊本日日新聞社論説主幹
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よく聞かれるのが、「なぜ水俣病問題は70年も続いているのか」である。しかし、この答えは案外簡単なのではないか、と思っている。短く挙げれば以下のようになる。   

①水俣病を引き起こした側が不作為を繰り返し、問題が再生産され続けている
②解決のチャンスは幾度もあったにもかかわらず、加害者の側が根本的な解決をしようとせず、その時々で弥縫(びほう)策に終始してきた
③被害者が異議を申し立て続け、泣き寝入りしていない
④水俣で何が起きたかをさまざまな人がさまざまに表現している


まずは①と②、不作為の問題を見ていきたい。チッソの工場排水はなぜ止まらなかったのか、である。

見逃された自然界のサイン

自然界に異変が起きていることを伝える報道のさきがけは1954年8月1日の熊本日日新聞朝刊だ。

「猫てんかんで全滅 水俣市茂道部落 ねずみの激増に悲鳴」

記事にはこうある。茂道は120戸の漁村。6月初めごろから猫が狂い始め(地元では「猫てんかん」と言っていた)、百余匹いた猫が全滅し、ネズミが急増、各方面からもらってきた猫もこれまた狂ったように死ぬことから、ネズミの駆除を市役所に依頼した。水田はない。

こんな内容だが、今から見れば重要なヒントがあった。茂道は漁村。猫が食べるのは魚、しかもよそから持ってきた猫も死ぬ。ということは、猫ではなく魚に問題があるのではないか。水田はないので農薬も関係なさそうだ……。

しかし、この記事が生かされることはなく、その後の検証記事もなかった。そして2年後の公式確認を迎える。自然界のサインは見逃されたのだった。

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【不作為によって被害は拡大した】

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