「きれい事が負けてほしくない」
ーー誰彼かまわず切りつけて殴りつける劇中の主人公・山田太郎は、SNS社会のわれわれの姿だということを、観客に問いかけていると感じました。ラストシーンの少年の行動が象徴的ですが、人にしたことはめぐりめぐって自分に返ってくる。そんな気づきも与えてくれます。
この物語は、もともと映像作品にしたくて書いたのですが、過激なテーマと特殊な世界観ゆえにお蔵入り寸前だったところ、漫画編集者の目に留まり、漫画化されました。するとそれが話題になって、映画化につながりました。
そんな物語の世界観を言葉にするのは難しくて。強いて言葉にするなら、「神の存在」あるいは「神の立ち位置」です。
人は神から与えられた手持ちのカードで生きるしかないけど、明らかに不平等なカードしか配られていない人もいる。それで勝負をしないといけないとなると、いかに機会均等をうたっている社会でも、現実的にはどうやっても挽回不可能。そういう人が、残念ながらたくさんいる。
そういう神の気まぐれなカード配りに、例えば人と人のつながりや触れ合いによって人生を変えていくようなきれい事が、負けてほしくないという思いがあります。
これまでにも僕は、現代社会に生きにくさを感じる、さまざまな問題を抱える人たちが、少しだけ前を向いて生きていく話を書いてきました。今回はそれとは少し違いますけど、神とは、人間社会全体であったり、自分たちの家の中にあるものにも通じるかもしれない。
この物語から、何かを感じていただけたら嬉しいです。
ヘアメイク:今野亜季(A.m Lab)
スタイリスト:鬼塚美代子(Ange)
