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「そこが動かなくなると会社全体が止まる」、意外と見えない"自社の急所"をあぶり出すサイバー対策5つのポイント

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意気消沈の経営層
(写真:IYO / PIXTA)
  • 橋本 詩保 SecurityScorecard, Inc. インターナショナルマーケティング担当 バイスプレジデント
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サイバー攻撃に強い「止まらない企業」へ変革するために、経営層が主導すべき具体的なアクションは以下の5つに集約されます。

1. 自社の依存構造を洗い出す

まず取り組むべきは、取引先リストの整理ではなく、事業の「急所」の特定です。「どこが止まれば、自社のビジネスは止まるのか」を、再委託先やクラウド基盤まで遡って可視化してください。 経営に問われるのは「誰と契約しているか」ではなく、「どこに事業の継続性を預けているのか」という実態の把握です。

2. サイバーレジリエンスをKPIに組み込む

「止まらない力」を、売り上げや利益と同様の経営指標として数値化してください。

● どのシステムが停止した場合に、どれだけ売り上げに影響が出るか
● 復旧までにどれだけの時間を要するか
● 外部依存による影響範囲はどこまで広がるか

これらを定量的に把握して初めて、リスクの大きさに応じた適切な投資と経営判断が可能になります。

3. 取締役会レベルでリスク議論を行う

サイバーリスクは現場に任せるテーマではなく、純然たる経営アジェンダです。 すべての攻撃を防ぐことは不可能です。だからこそ、「どのリスクを許容し、どこを死守するのか」を決定する責任は経営にあります。インシデント発生時に問われるのは、現場の技術力ではなく、経営としての「認識と備え」の正当性です。

4. 官民の情報ネットワークへ参加する

サイバー攻撃は一社のみで戦えるものではありません。攻撃者は防御が脆弱な個所を起点に侵入を試みるため、自社完結の対策には限界があります。 他社のインシデントは、自社にとっての「予兆」です。ISACや官民連携ネットワークを通じて得られる情報を、自社の防御へ迅速にフィードバックする体制を構築してください。

5. インシデント前提の広報戦略を構築する

経営が最も軽視しがちなのが「有事のコミュニケーション」の準備です。 攻撃を完全に防げない以上、重要になるのは「発生したときにどう振る舞うか」です。説明の遅れや不十分な開示は、被害そのもの以上に企業価値を毀損します。あらかじめ対応シナリオを設計し、「どう守るか」だけでなく「どう説明し、信頼を維持するか」を経営の責任として定義してください。

ビジネスを止めない構造を設計する

サイバー攻撃を完全に防ぐことは、もはや現実的ではありません。どれだけ対策を講じても「攻撃を受けてしまう」という冷厳な事実を前提に備える必要があります。

しかし、ビジネスを止めないことは可能です。その成否を分けるのは、「防御」に固執するのか、それとも「持続可能性」を根幹に据えた事業設計へ転換できるかという点にあります。

本質的な問いは、「攻撃を止められる構造になっているか否か」です。自社が何に依存し、どこが止まれば事業が瓦解するのかを的確に把握し、設計段階から継続性を織り込むことこそが、企業の真の耐性を決定づけます。

サイバーリスクは、もはや、日常的な経営の前提条件であると踏まえ、リスクを事業構造に組み込み意思決定を行えるかです。有事の際に問われるのは、その不断の積み重ねに他なりません。サイバー攻撃は止められませんが、ビジネスを止めない構造は、経営の手で設計することができるのです。

東洋経済Tech×サイバーセキュリティでは、サイバー攻撃、セキュリティの最新動向、事業継続を可能にするために必要な情報をお届けしています。

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