この視点を持たない限り、自社の防御をどれほど固めても、ビジネス停止という致命的リスクを回避することは不可能です。
さらに問題を複雑にしているのが、サプライチェーンにおけるブラックボックス化です。 直接関係のあるベンダーは把握していても、その先の「再委託先(Nthパーティ)」まで含めた構造を正確に把握しているケースは稀です。多層的な委託関係の中で、平時には見えないリスクが、有事には想定以上の広がりを見せます。
その要因として、経営現場では以下のような危機的な状況が散見されています。
● どの要素が停止すると事業が止まるのか、経営層として説明できない
● リスクに応じた優先順位付けができず、対策が場当たり的になる
サプライチェーンの可視性が不十分なままでは、「どこを守るべきか」という判断すら曖昧になります。
また、サイバーリスクに対する社会的・法的な要求は大きく変化しています。規制強化により迅速な開示と説明責任が求められ、投資家も「どのように備え、対応したか」を厳しく評価するようになりました。
もはや「外部の問題だった」という説明は通用しません。経営層には、自社の依存構造の認識、リスクの把握、そして適切な備えという「プロセスの正当性」が問われています。サイバーリスクは、すでに経営層に対する「説明責任」に関する問題へと進化しています。
サイバーリスクは経営課題
こうした中で注目されているのが「サイバーレジリエンス」という考え方です。これは「侵入されないこと」を目指すのではなく「侵入されても止まらないこと」を重視するアプローチです。
攻撃の高度化により、すべてのリスクを未然に防ぐことは現実的ではありません。そのため、「被害後にどれだけ早く復旧できるか」「どこまで影響を限定できるか」という観点での備えが最優先になります。
サイバーリスクはIT部門だけで完結する問題ではなく、売り上げ減少やブランド毀損といった経営指標に直結します。 さらに、投資領域の決定、業務委託先の選定、M&Aの判断など、あらゆる経営判断はサイバーリスクと不可分であるため、外部への依存度合いがリスク構造を左右します。そのため、サイバーリスクに対する全社方針には経営層が関与し、明確に定義することが不可欠です。
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【ビジネスを止めない構造を設計する】
