その後、米西戦争(1898年)、第1次世界大戦(1914~18年)、第2次世界大戦(1939~45年)と、アメリカは拡張主義の道をどんどん進む。いずれも弱い相手を選んで戦う、そして相手を挑発することで、アメリカ社会を動員するというやり方で戦争を行ったというのである。
ここにアメリカの2つの相矛盾する建国精神、1つは他との関わりをもたず、自らの世界をつくりあげるという「非侵略精神」と、そして相手を自らの価値観に従属させるという「侵略精神」のうち、後者が勝利を収めアメリカをつくっていくのである。
拡大する帝国は、その拡大ゆえに倒れる
18世紀に拡大するヨーロッパが、ローマ帝国と同じように崩壊するのではないかと考えたシャルル・ド・モンテスキュー(1689~1755年)やエドワード・ギボン(1737~94年)と同じように、連邦主義を主張するアレクサンダー・ハミルトン(1755~1804年)も、そして『アメリカのデモクラシー』を書いたアレクシ・ド・トクヴィル(1805~1859年)も、アメリカは拡大によって自壊していくのではないかと危惧する。
拡大する帝国は、その拡大ゆえに倒れる。これは歴史が証明している。もちろんその拡大には軍事的、帝国主義的拡大だけではなく、宗教的、文化的拡大もありえる。いわゆる西欧的文化、すなわち西欧的価値観の拡大である。

拡張主義は時にソフト・パワー戦略の形をとる。アメリカの国際政治学者だったジョゼフ・ナイ(1937~2025年)は、『アメリカへの警告』(山岡洋一訳、日本経済新聞社、02年)の中で、21世紀のパワーゲームの中で、重要な役割を演じるのは、軍事力ではなくソフト・パワーであると述べている。ずばり『ソフト・パワー』(山岡洋一訳、日本経済新聞出版社、2004年)と『スマート・パワー』(山岡洋一・藤島京子訳、同、2011年)という書物も出す。
ソフト・パワー戦略とは、「丘の上の都市」のように、世界から尊敬される価値基準を流布することで、世界を精神的に征服するというものである。このソフトとはアメリカ的自由とアメリカ的民主主義である。たとえ軍事的に力を失ったとしても、精神世界の価値観で世界を支配するのである。
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