音川さんの上司である中室淳二さんは、当時の状況をこう振り返る。
「これまで誰も手をつけなかった場所に、チャレンジする精神と勇気がすごいなと思っていました。我々はお酒の専門家ではなく、広告会社ですからね。地域とどう連携していくかも、最も苦労した部分だと思います」
プロジェクト内容が決まったとしても、実現し、価値を生み出すためにはプロフェッショナルの力が不可欠だった。ここから、音川さんは沿線のワイナリーや酒蔵へ協力を仰ぐために地道な営業活動をスタートする。
「商品が駄目になるリスクを誰が取るのか」
音川さんの前に現れた次の壁は、沿線の酒蔵やワイナリーの理解を得ることだった。
「大切な商品をお預かりしてトンネルに置いても、熟成が成功するかどうかは分からない。商品が駄目になるリスクと、そこに割く労力が見合わないと判断されることが多かったです」(音川さん)
難色を示す企業は少なくなかった。
それでもめげずに飛び込み営業を続けて数カ月後、近鉄が主催するイベントで繋がりがあったカタシモワインフードと中本酒造店の代表が、このプロジェクトに興味をもち、実証実験に手を挙げてくれた。
商品の貯蔵場所として選ばれたのは、入り口から約500メートル進んだ先にある“横穴”である。
次ページが続きます:
【熟成庫として最適な“横穴”とは?】
