興味を持って視察に訪れてみると、ところどころ水が湧き出ていた。先の見えないほど長く続く内部。管理されているものの、一般人が行き来できる場所ではない。
だが、音川さんは大正時代の建造物の遺産ともいえる立派なレンガ作りや、先が見えないほど長いトンネル内に、広告屋の血が騒いだ。
そして、同僚とプロジェクトチームを結成した。
湧き水、しいたけ、野菜の3連敗
まず、初期のアイデアとして挙げたのは、この湧き水を利用したオリジナル飲料水の製造・販売である。
しかし、この案は早期に頓挫した。
「湧いている水が周辺地域の生活用水としても使われていたんです。権利関係の契約書面なども出てきたため、これは手を出せないと判断しました」
新規事業において「できそう」と「できる」の間には、常に契約や制度の壁が存在する。
次に浮上したのは、しいたけ栽培だった。湿度が高く暗いトンネルはキノコ栽培に適しているように思えたが、これも制約に阻まれる。
「しいたけは一度でき始めると大量にできるため、頻繁に様子を見に行かなければなりません。でも、ここは厳重に管理された避難経路です。許可の関係で、しょっちゅう自由に出入りできず、断念しました」
低温のため、かぼちゃなどの野菜の長期貯蔵も試したが、ことごとく失敗した。
「かぼちゃは、湿度の高さからカビました」と音川さんは苦笑いする。
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【トンネル内の環境データが示していたもの】
