昔、アイスホッケーをしていたことがあるので、アイススケートの例を挙げてみよう。
初めてアイススケートをすれば、どんな人でもまず間違いなく転ぶ。転べば痛いし、頭を打って入院ともなれば大惨事だ。
しかし、肝心なのは頻度とインパクトの掛け算だ。転ぶ可能性は非常に高いが、プロテクターをつけることで、痛みやケガのインパクトは最小化される。頭を打って入院すれば生活にも大きな影響を与えるが、そもそも確率は低く、ヘルメットを被ったりクラスを受けたりすれば、さらに確率もインパクトも低くなる。
つまり、アイススケートという体験のリスクは、相対的に低いと判断できる。
ところが、骨折したとか、入院したという部分だけに焦点が当たってしまうと、恐怖心が生まれ、非常にリスクが高いように感じる。感情にハックされて確率もインパクトも見えなくなってしまうのだ。そうなるとアイススケートをトライすること自体をやめてしまう。
そこには必ずリスクがある
新しい体験をしようとすれば必ずそこに何らかのリスクが生じる。そして、多くの場合は失敗する。
体験におけるリスクマネジメントとは、失敗することを念頭に、どうやって最悪のケースが起きる確率とインパクトを下げるかであって、失敗することを避けたり、リスク自体をゼロにしたりしようと必死になることではないのだ。
何より、体験から何かを学ぶうえで、失敗は最も重要な栄養素だ。失敗したくないと感じるのは当然だ。しかし、見方を変えてみて欲しい。そもそも人間にとって、失敗から学ぶことは生存の最重要戦略であったはずだ。
自然界でのサバイバル生活をイメージしてほしい。
すでに確実にできることについて、わざわざ何かを学ぶ必要性は低い。しかし、同じ失敗を繰り返すことは、死に直結する。例えば、誤って毒キノコを食べて食中毒になるとか、誤ってクマの縄張りに足を踏み入れるといったことは、一度きりにしなければならない。さもなくば、この世とはあっという間におさらばだ。
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【人間は失敗から学ぶ】
