東洋経済オンラインとは
政治・経済・投資

銀座でドリア300円、グラスワイン100円…インフレになってもサイゼリヤが圧倒的な低価格を貫くことができるワケ

6分で読める
(写真:ブルームバーグ)
2/2 PAGES

この「自社一貫モデル」により卸業者を排除しつつ、品質と価格をコントロールしている。工場での集中生産により、店舗での調理工程も最小限に抑えられている。野菜はサラダ用に下処理済み、肉もカット済みのため、店舗の厨房(ちゅうぼう)では包丁を使わず、最終加熱や盛り付けだけで済む。

大和証券の津田和徳アナリストは、サイゼリヤは調達先を変更したり、内製化に切り替えたりするなど「自動車メーカーのような発想や工夫が多い」と話す。

サイゼリヤについて研究した作新学院大学経営学部の中川仁美教授(会計学)は、アパレル大手ファーストリテイリング傘下のユニクロのようなSPA(製造小売り)型の発想を外食に持ち込んだ先駆的な企業だと指摘する。

資本効率と高い回転率によって低価格を実現しており、「低価格を前提にビジネスモデル自体を設計し、最初から値上げを前提としていない。多くの飲食業が販売で戦うのに対し、同社は供給で戦っている」と分析する。

実際、外食チェーン各社がテレビやSNSで販促を行う中、同社は広告にほとんど費用をかけない。一時的な集客増による需要の波が、効率的な店舗運営を損なうと考えているためだ。

サイゼリヤの半期報告書によると、正垣氏は今年2月28日時点で個人で27.58%を保有する筆頭株主だ。値上げをしない背景には株主の意向を気にせず、創業者の哲学に沿った経営に集中できる株主構成もある。

一方で、価格据え置きが収益の重しになっているのも確かだ。直近の四半期(25年12月-26年2月期)では営業利益の6割以上をアジアを中心とする海外が占めた。国内事業の営業利益率は3.5%にとどまる。

もう1品

ただ、サイゼリヤの国内客単価は862円と、4年前と比べて90円以上伸びている。松谷社長は、物価高で消費を切り詰める中でも安いお店ではもう1品食べようとぜいたくする動きがあると話す。さらに、利益率の高いデザートメニューも組み合わせてもらうことで値上げせずに売り上げを伸ばす戦略だ。

中東情勢の緊迫化によるエネルギー価格上昇や円安傾向が続く一方、日本の実質賃金は1月に13カ月ぶりに増加したことなどもあり、株式市場ではサイゼリヤに値上げを期待する声も出ている。正垣氏も自著では、将来的な値上げの可能性までは否定していない。

「今後賃金が上がっていき、お客さまの懐に余裕ができたとき」に、かたくなに値上げをしないのは社会の変化を無視することになるという。その上で「もしサイゼリヤが値上げをするとしたら、それはお客さまが困らなくなったとき。お客さまに経済的な余裕ができるまで、私は値上げに踏み切ることができない」と記している。

松谷社長は会見で、給料が上がって顧客が使えるお金が増えれば当然それに見合った形で価格を上げていけばいいとした。一方、機会損失をなくすことが重要で、営業時間の延長やピーク時の回転率向上、朝食メニューの充実など今は「売り上げを伸ばせる取り組みはまだまだある」と述べた。

著者:長谷部結衣、横山桃花、松山かの子

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

政治・経済・投資

人気記事 HOT

※過去1週間以内の記事が対象