東洋経済オンラインとは
政治・経済・投資

銀座でドリア300円、グラスワイン100円…インフレになってもサイゼリヤが圧倒的な低価格を貫くことができるワケ

6分で読める
(写真:ブルームバーグ)

INDEX

インフレ傾向が続く日本で値上げが相次ぐ中、その流れにあらがう存在がある。1973年の創業以来、ほとんど値上げをしてこなかったイタリア料理チェーン、サイゼリヤだ。

看板メニューの「ミラノ風ドリア」は税込み300円。グラスワインは100円だ。1000以上ある全国のどの店舗でも同一価格で、東京・銀座の店でも例外ではない。2020年に硬貨のやり取りを省略するため、メニューの大半で端数の1円を引き上げたのを除けば、全体的な値上げは行っていない。

「コスパがよく、家計の助けになっている」。週に2回ほど利用するという千葉県在住の藤田拓海さん(27)は幼い頃から通っているサイゼリヤは「自分にとって家のような存在」だと語る。昔と比べても価格はほとんど変わっておらず、住まいを選ぶ際には近くに店舗があるかどうかも判断基準の一つにしているとも話した。

他の飲食店が次々と値上げに踏み切る中、藤田さんのような消費者からのサイゼリヤへの支持は強まるばかりだ。既存店売上高は3月まで39カ月連続で前年同月比2桁成長を達成した。ただ、イラン情勢の緊迫化でさらに大幅なコスト増が見込まれており、繁盛する店舗の様子と裏腹に経営環境はこれまで以上に厳しさを増している。

8日には今期(26年8月期)の営業利益予想を182億円に従来の190億円から下方修正した。客数と客単価は増加傾向が見込まれる一方、米など食材価格上昇の影響が大きいという。翌日の株価は前日比14%安と約15年ぶりの下落率を記録した。

SMBC日興証券の皆川良造アナリストは、「業績の最大のカタリストは国内での値上げ」と指摘。「10%以下の値上げであれば客数への影響なく値上げ分がそのまま増益になるのではないか」と述べた。

 松谷秀治社長は決算会見で、イラン情勢を背景にエネルギー価格上昇が飼料などを通じて原材料価格全体に波及し、「最終的にすべてのコストが上がる」との見通しを示した。特に懸念しているのは物流費で、大きく上振れする可能性があるという。

ただ、外食は調理から提供までの間で改善の余地があり、企業としてコストを下げるために努力する必要があると指摘。値上げについては「今はない」との考えを示した。

中古のカローラ

サイゼリヤが価格維持にこだわる背景には、創業者で現在は会長の正垣泰彦氏(80)の哲学がある。東京理科大在学中に千葉県市川市で1号店を開いた同氏は、値上げは企業側の都合に過ぎず、顧客の利益にならないとの考えから、徹底した効率化とコスト削減を追求してきた。「値上げをしてお客さまに負担を求める前に、私たちが改善できることは無限にある」。正垣氏は自著でそう記している。

正垣氏を40年以上知り、1号店跡地を活用した教育記念館の広報担当を務める大山達雄氏によると、同氏は「ムリ・ムダ・ムラ」をなくすことに徹底してこだわっていた。

例えば「ソースを袋から出す際に3%残るなら、どうすれば2%にできるか」といった細部にまで目を配り、その積み重ねが億単位の利益につながると教えられたという。無駄な金遣いを嫌い、高級車に乗る経営者に「中古のカローラに乗れ」と叱ったこともあったと振り返る。

その思想を体現するのが、中間業者への依存を極力減らすサイゼリヤのビジネスモデルだ。同社は国内外に七つの自社工場を設立し、食材の内製化を進めてきた。ドリアは、福島県の自社工場で精米した米に、オーストラリアの工場で製造したミートソースとホワイトソースを組み合わせる。レタスは自社栽培し、オリーブオイルやワインはイタリアの生産者から直輸入している。

次ページが続きます:
【自動車メーカーのような発想や工夫】

2/2 PAGES

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

政治・経済・投資

人気記事 HOT

※過去1週間以内の記事が対象