もう1つ、稲盛さんと私に共通しているのは、創業者としての視点だと思います。
稲盛さんは事業が成功しても止まることなく、常に社会がよくなるためにその事業をどう拡大していくかを考え、必要な投資を続けながらも経営の安定性を保つというスタイルでした。
その結果、セラミックから半導体という最先端のテクノロジーに行き着いたわけです。
私も同じように考えています。この点、サラリーマン経営者は、新事業への積極的な投資がなかなかできません。
自分の任期の数年間に株価や指標が上がればそれで満足してしまうからです。ストックオプションで従業員や株主がハッピーであればいいという考え方ですね。長期的視点に立った経営とはいえません。
もし稲盛さんが存命で経営の一線におられるとしたら、今も株価に一喜一憂することなく、次の新しい技術にどんどん投資されているに違いないと思います。
「利他による経営」と「公益は私益に繫がる」
稲盛さんは「利他による経営」を大切にしていました。私も基本的な考え方として「世のため人のため」を信念にしているのですが、もう1つよくいうのは、「公益は私益に繫がる」です。
例えば、地方創生プロジェクトをSBIグループで行っていますが、これは地方にとっても、地方銀行の活性化ということで非常に貢献できたと思いますし、それがまたSBIグループの利益にも繫がりました。
さらに私は、長年大きな社会問題になっているアビュースド・チルドレン(虐待を受けた子どもたち)の支援にも以前から力を入れています。親に見放され、虐待を受けている子どもたちを支援できるよう、公益財団法人SBI子ども希望財団を設立しました。
また社会福祉法人も作り、縁あって私淑する安岡正篤先生の農士学校の跡地に小学校、中学校、体育館、子どもたちが暮らす棟、教職員の棟などを建てて、現在50人ぐらいの子どもをサポートしています。
高齢者は選挙権があるので、政治家も票を集めにいきます。しかし、子どもには選挙権がありません。
複雑な家庭で育った子どものための施設は、近隣で子どもを持つ大人の反対を受けやすく、非常に困難なのです。しかし、大義があると思うから続けています。
経営における大義は稲盛さんがたいへん重視していたことでした。大義があると思うから、困難や批判にも挫けずやり抜く力が湧いてくるのです。
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【多くの人に反対された新生銀行の買収】
