このようなワイルドなありさまが酔っぱらいのテンションもあげてしまうのだろう。「立ちション ゲロするな!!!」「ダサいナンパしない」などの、どストレートな警告があちこちに掲げられている。この光景も、てんごでしか見かけない。
大阪弁で悪ふざけを「てんご」という。天神橋筋5丁目は、まさに「てんご」の呼び名が似合うエリアだ。拭いきれないヤンキー……いや「やんちゃな大阪」のスピリットがここにはある。
ちなみに筆者は、てんごで、ついにヒョウ柄のトレーナーを着こなしたおばちゃんに遭遇した。UMAではなかった。ごく普通に歩いていらっしゃる。やはり、本当にいたのだ。とても神聖な存在に感じた。てんごの磁場は他とは違う。
「てんご」は、ひたすら直進する天神橋筋商店街のなかで唯一、横切る商店街が存在する。天五中崎通商店街は、天神橋筋商店街とレトロな街並みでフォトスポットとしても人気が高い「中崎町」を東西に結ぶ約400mのアーケード商店街だ。にぎやかな天神橋筋商店街とは趣きが異なる、ほの暗い雰囲気があり、コアな人気をつかんでいる。
その十字路を右手にそれてすぐにある大衆食堂「力餅食堂」には「虎ざる」(650円・税込)という冷たい蕎麦があり、地元の名物となっている。コーヒーとカレー粉の2種類の麺を交互に並べ、虎の縞模様を表現しているのだ。麺にコシがあって、もちもち食感。カレー風味はさほど強くないがコーヒーはかなりパンチが効いている。てんごを訪れたならば、阪神タイガースの優勝を祈念しながら「食べざる」をえないメニューだろう。
阪急のハイソな文化が香る「てんろく」
「てんろく」の愛称で親しまれる天神橋筋6丁目商店街は、てんごとはガラリと雰囲気が変わる。それはなぜか。Osaka Metro堺筋線と谷町線に加え、ここに阪急千里線が乗り入れるからだ。
阪急といえば関西圏で「上品」「高級」「エレガント」なブランドイメージを持つ名門私鉄。2013年に完成した地上44階建ての超高層タワーマンション「ジオタワー天六」がランドマークとしてそびえたち、駅前には「高付加価値」を謳うスーパーマーケット「阪急オアシス」の天六店もある。
てんろくは、まことしやかに語られる「大阪は北上するほどに洗練されてゆく説」の信憑性を増加させるサンプルと言えるだろう。このように天神橋筋商店街を歩くと、下町の大阪と山の手風の大阪、どちらサイドの大阪も一挙に見学できるのである。
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【商店街のなかでもっとも変化した「てんひち」】
