年を重ねて、器官そのものが突然弱るのではありません。まず、そこではたらく細胞1つひとつの元気が失われていきます。その結果として、器官のはたらきが少しずつ低下し、やがて「体の老い」として現れるのです。つまり、体の老いの正体をたどっていくと、その出発点には「細胞の老化」があります。
「細胞の老化」は何歳から始まるのか?
ここで、体のつくりを整理してみましょう。私たちの体は、次のような階層構造になっています。
細胞→組織→器官→器官系→体全体
細胞が集まって組織をつくり、組織が組み合わさって器官になります。たとえば、心臓には内側から、心内膜、心筋、心外膜の3層の組織があります。さらに複数の器官が連携して、消化器系や循環器系といった「器官系」を構成し、生命を維持するためにそれぞれの役割を果たしています。
この中で、もっとも小さく、もっとも基本となるのが「細胞」です。私たちの体には、30兆個以上の細胞が存在するといわれています。1秒に1個ずつ数えても、数え終わるまでに100万年近くかかる数です。
それほど膨大な数の細胞が、それぞれ役割を分担し、休むことなくはたらくことによって、私たちは生きています。
体を動かす細胞、酸素を運ぶ細胞、不要になったものを処理する細胞、外敵から体を守る細胞、ホルモンや消化液などをつくる細胞。1つひとつの細胞が、自分の仕事をきちんと果たしていれば、体は元気でいられます。
逆に言えば、細胞がしっかりはたらくことができなくなると、その影響は組織へ、器官へ、そして体全体へと広がっていくのです。
では、その細胞の老化は、いったい何歳くらいから始まるのでしょうか。この問いに、はっきりとしたひとつの答えはありません。生物学的には、「老いは生まれた瞬間から始まっている」と表現されることもあります。
一方で、個人差もありますが、多くの人が体の変化から「老い」を自覚し始めるのは60歳前後だと思います。細胞のはたらきや、老化した細胞に特徴的な変化(老化マーカー)に着目した多くの研究によって、細胞の老化は若いうちから連続的に進み、60〜80歳代になると顕著になりやすいことがわかっています。
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【「細胞の老化」に影響を与える要素】
