ニデックの子会社で広く不正会計が蔓延していた疑いは、遅くとも19年、ニデックから「負の遺産」を処理する「資産健全化プロジェクト」の説明を受けた時点で、旧PwC京都側も把握している。
社内向けに内部で管理する「管理会計」がずさんであったことも、旧PwC京都は把握していたという。元幹部は、ニデック首脳から「(会計は)四半期のひと月、ふた月目は管理しない」と言われ、「普通の会社ではありえない」と思ったと振り返る。
消去法で「適正意見」
しかし、旧PwC京都は「無限定適正意見」、つまり会計に問題はないとの監査意見を出し続けた。なぜか。
監査意見には「無限定」のほか、「限定付適正意見」「不適正意見」「意見不表明」があり、問題があれば「無限定」以外を選ぶ。元幹部は「四半期(ごとに公表される財務会計)では適正に処理していると理解していた。内部統制の改善状況は微妙だったが、(無限定)適正意見以外を出すだけの根拠がなく、消去法で(無限定を)選んでいた」と語った。
相次ぐ子会社の不適切な会計処理を受け、東京の子会社監査チームからはニデックとの監査人契約を打ち切るよう求める声が幾度も上がっていたという。しかし、実際に契約が打ち切られることはなかった。
旧PwC京都の23年6月期の年間売り上げは約70億円。うちニデックからの報酬は1割弱の約6億円を占め、大口顧客への配慮が不正会計の見逃しにつながったとの見方もある。
元幹部は「(ニデックと契約を)切ってもほかの顧客で十分補える。経営上は問題なかった」と話す一方、「子会社での不正がいろいろ発覚していたのに、本社がしっかり指導できていると思い込んでいた。認識が甘かった。今思うと危機感が足りなかった」と後悔を口にした。
26年4月に公表された第三者委の最終報告では、「監査調書の閲覧や担当パートナーに対するヒアリングは実施に至っておらず、会計監査人から書面による回答を受けた」だけとして、監査人に対する直接的な評価は避けている。しかし、業界内では「ニデックと旧PwC京都の関係性は明らかに異常だ」(ある公認会計士)との見方がもっぱらだ。
PwCジャパンは「個別の監査業務の内容に関わる」として当時の対応が適切だったかについてのコメントは避け、「今後も社会の期待に応えるべく監査品質の向上に向けた不断の取り組みを継続していく」としている。
