そして、このコアをもっとたくさん並列稼働させれば、Macさえも動作させることができる……それが実現したのが20年に発表されたMシリーズチップである。しかも、パソコンと違って放熱ファンを持たないiPhoneやiPadのために開発されたApple Siliconは発熱が非常に少なく熱当たりの性能が非常に高い。それゆえ、多少の熱を許容(ファンで放熱)すれば、大きく性能を向上させることができた。
これが、現在MacBook ProやMac Studioが非常に高性能なモデルをラインナップできる秘密である。
もとより、iPhoneは年間2億台以上を製造する、世界で一番大量に製造される電子機器である。同じラインでチップセットを作れば、製造効率は高いし、価格も抑えられる。TSMCにとっても圧倒的に大量受注できる優良顧客である。TSMCも製造計画自体が、アップルへの供給を最優先にしたものになるのは当然だ。
こうして、アップルは、ジョブズ時代からの『チップセット開発・生産の主導権を握る』という夢を実現したのだ。
実は、macOSもiOSに寄せていっている
工夫はそれだけではない。
iOSのルーツは01年のMac OS X。もっと遡れば、ジョブスがアップル から追放されている時代に作ったNeXTという会社のNeXT OS にルーツを持つ。そうやって作られたMac OS XのサブセットがiPhone OS(現在のiOS)の起源だった。
14年にはSwiftという新しいプログラミング言語が発表され、iOS、macOS、watchOSなどすべてのAppleプラットフォームで使用される新世代の言語となった。
その後15年にiOS用のグラフィック基盤であるMetalがmacOSに導入され、16年にはAPIやファイルシステムの共通化が進んだ。そして、18年から19年にかけて、後にCatalystと言われるiOS/iPadOSのアプリケーションをmacOS上で動かす仕組みが発表された。つまり、長い時間をかけて、ひとつのコードを書けば、iPhone/iPad/Macそれぞれで動くようなソフトウェア的な仕組みが作られてきたのだ。
パソコンのアプリをスマホのチップセット上で動かすのは容易なことではない。しかし、長い間かけて、MacもiPhoneも同じハードウェア上で、同じソフトウェアで動くような仕組み作りが続けられてきたのである。
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【単なる「コストダウンモデル」ではない】
