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南丹市事件で露呈した"専門家"の暴走 「推理ごっこ」を煽った無責任と捜査に支障をもたらした罪

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安達結希 南丹市
京都府警が家宅捜索に入った安達結希さんの自宅で、箱を運ぶ捜査員(写真:時事)
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加えて、動機づけの側面として、承認欲求に満足や感情的満足の問題も重要である。衝撃的な事件に関する情報は高い関心を集めやすく、拡散することで「いいね」や共有といった即時的な報酬が得られる。SNSや動画配信を収益化している人にとっては、金銭的な報酬も得られる。

この報酬構造は、情報の正確性よりも新奇性や刺激性を優先する方向に行動をシフトさせる。あいまいな状況において、特定の人物を「加害者」として「推理」することは、注目を集めやすく、「自分は警察よりも先にこんな推理ができる」という偽りの「優位性」を抱くこともできる。

もちろん、警察もあらゆる可能性を考慮して捜査しているわけであるから、警察も家族が容疑者であるという推理は初期段階から持っていたであろう。素人のほうが警察に先んじていることなどあるはずがなく、警察は捜査上の理由や証拠の不十分さから情報を出していなかっただけである。

専門家による無責任な情報発信

今回、特に目を引いたのは、専門家と呼ばれる人も、こうした「物語」や臆測の拡散に加担していたことだ。

ある元警察官たちは、動画発信サイトにおいて、早くから自らの臆測に基づく不確かな情報や見立てを垂れ流し、視聴数が過去最大であったと喜んでいた。

子どもが行方不明になっているという状況で、その重大さよりも視聴数を喜び、視聴数を上げることに腐心するとは、きわめて醜悪な姿であるとしか思えない。しかも、彼らが拡散した情報には、いくつもの間違いやデマの類も含まれていた。

彼らは、本来なら専門家として、一般の人々がSNSなどでデマや臆測を拡散していることに歯止めを掛け、戒める役割を果たすべきであるのに、一緒になって、あるいはその先鋒を切って同様の行動に加担していた。

承認欲求の満足や視聴数による収益という即時的な報酬が、このように人を変えてしまうことをまざまざと見せつけられる事態であった。こうした状況を見ていると、言葉は悪いが、まるで事件をエンターテインメントとして消費しているようにすら見えてしまう。

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【デマや臆測の危険性】

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