K君は、小学校1年のときから「計算」が苦手で、やり方を理解するのに、とても時間がかかった。小学校6年生まで算数の成績はクラスで一番下だった。読み書きもやや苦手だったが、漢字の形を覚えて読むことはできたという。
中学校時代には、数のあまり細かな計算というよりも、規則や背景の数の世界を理解することができてきたので、クラスの中では中位の成績になった。
その後、地元の高校に入ると数学という世界が理解できるようになり、数学の成績は高くなりました。しかし、計算の遅さというのが、どうしても足を引っ張ってしまう。
そこでK君は、大学受験の際に、数学の時間延長を申し出ることを決め、熊谷名誉教授のいた教育相談室にやってきた。
知能検査の1つであるKABC-IIを実施し、時間制限がなければほぼすべて解答できることを証明。さらに、時間制限のある検査では、計算時間が小学校4年生以下であることがわかった。
熊谷名誉教授が意見書を書き、それをもって医療機関において診断書を書いてもらい、大学受験で提出した。
その結果、数学の試験のみ、通常の1.3倍の時間延長を認めてもらうことができた。
受験では試験時間の延長を認める制度がある
実は中学から大学の受験では、発達障害などの障害があって時間内の解答が困難な生徒は、申請すれば「1.3倍」または「1.5倍」の試験時間の延長が認められる制度がある。
24年4月から国公立だけでなく私立大学でも認められるようになった。
K君は希望大学に無事合格したという。
「算数障害といっても算数の基礎部分の障害。計算が遅くても計算だけがすべてではありません。計算困難(計算に時間がかかる)はあっても、数的推論はできる場合は、K君のような軌跡をたどれるはずです。
また、小学6年生ぐらいまでの知識は、身につけることも十分可能です。小学校で習う『速さ』や『比率』、『割合』のように生活に関わる算数をしっかり理解できれば、世の中を生きていけます。そこから先は、K君のようにやりたい子が自由に学んでいけばいい。それくらいの大らかさで算数に向き合うのがいいのではないかと思います」(熊谷名誉教授)
