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《祖父は諦め父は破産》それでも孫は"消滅寸前の布"を拾った「飯は食えない」と言われた遠州綿紬が1.3億円売れるまで

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時代遅れの遠州綿紬に新しい価値を見出した、ぬくもり工房の大高旭さん(写真:筆者撮影)
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翌年、祖父から続いた大幸株式会社は、父の代で破産に至った。

浜松に、エルメスにも負けない物語が

事業立ち上げ当初、旭さんにはビジネスプランも強い志もなかったという。

「策もなく、とりあえずやってみようという気持ちでした。楽天市場の売り上げも好調でしたし、何よりも『遠州綿紬の事業ができる』っていう前向きな気持ちが強かったのだと思います」

転機は、浜松市北西の三ヶ日町にある初生衣神社(うぶぎぬじんじゃ)の宮司、神服部(かんはとり)氏との出会いだった。

初生衣神社は、平安時代末期から毎年伊勢神宮の天照大神に御衣の奉納を続けてきた。それを織っていたのが、この神社に祀られる織姫様だったと伝えられているという。

織物にゆかりのある初生衣神社。平安時代から天照大神に布を奉納していた(写真:ぬくもり工房提供)
伊勢神宮へ神様が着用する神御衣(おんぞ)を奉納する「おんぞ祭り」が毎年4月に行われている(写真:ぬくもり工房提供)

「浜松市は神様とゆかりのある織物の産地なんです。日本中で、神様とつながっている産地は浜松と奈良だけ。こんなに強いブランドストーリーはありません!」

名古屋時代にVOGUEで読んだ記事が浮かんだ。頭の中で、何かがつながっていく……。

エルメスのスカーフはなぜあれほど高価なのか。最高品質の素材、熟練職人の手作業、何より、語るべきストーリーを持っているからだ。それは、遠州綿紬も同じではないか――。

「消費するもの」ではなく「所有するもの」として捉え直すブランド価値を、旭さんはエルメスと遠州綿紬の双方に見いだした。

ただし、その価値をどうやって届けるかは、まだ見えていなかった。

その数年後、旭さんの携帯電話が鳴る。耳に響いたのは、見知らぬ声――大手ホテルグループ星野リゾート「界 遠州」の総支配人、岡本真吾。

一介の地方の織物問屋に、なぜ一流ホテルから連絡が?

後編:《善意が招いた2年の地獄》売上3分の2を捨てた…それでも星野リゾートが"5人の会社"に全館コーディネートを任せた訳

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