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《祖父は諦め父は破産》それでも孫は"消滅寸前の布"を拾った「飯は食えない」と言われた遠州綿紬が1.3億円売れるまで

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時代遅れの遠州綿紬に新しい価値を見出した、ぬくもり工房の大高旭さん(写真:筆者撮影)
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「確かに古いけど、古くないよなあと。当時は言語化できないもやもやがありました」

没落を知らないことが、旭さんの最大の武器だった。

口数少ない父からのひと言

オンラインショップのオープンから数カ月が経ち、事業が軌道に乗り始めたころ、思わぬ言葉をかけられた。

「父から、『この事業をやりたいなら、うちから独立してやってくれないか』と言われたんです」

大幸は、もう畳むから、と。普段旭さんの仕事に口を挟まない父からの、数少ない言葉だった。

「正直驚いてしまって。この事業をやりたいとは言ったけれど、当時は経営の知識なんてまったくありませんでしたから」

父はずいぶん前から覚悟していたのかもしれない。息子がやりたいというのなら、そして少しでも可能性のある事業であれば、早めに切り離したほうがいい、と。

素朴で温かい遠州綿紬の布は、ネットショップの若いユーザーに人気があった(写真:筆者撮影)

それまでの数カ月、楽天市場での売り上げは月200万、300万と順調に伸びていた。当時、サイト内に生地を扱う業者がまだ多くなかったことが主な要因だと旭さんは分析しているが、それだけではない。

「浜松にこんな生地があったなんて知らなかった」という購入者の声が相次いでいた。没落を知らない若い顧客にとって、素朴な縦縞の布は新鮮に映ったのだ。

2006年、26歳で旭さんは会社から独立し、遠州綿紬の卸問屋として事業を立ち上げた。楽天市場の屋号だった「ぬくもり工房」が、そのまま社名となった。

「私は自分の事業の立ち上げに精一杯で、本当にその選択でよかったのか、父に確認することもしませんでした。父はそれが最善の策だと、納得したんだと思います」

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【神様とつながっている織物の産地は浜松と奈良だけ】

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