一方で興味深いのは、会場内の飲食価格は意外なほど低く抑えられている点だ。
名物のピメントチーズサンドは1.5ドル(約240円)、ビールも6ドル(約950円)で提供される。この価格設定は収益を目的としたものではなく、来場者がストレスなく楽しめる環境を整えることで、体験価値を最大化する狙いがある。
収益はグッズで確保し、飲食は満足度向上に徹するという明確な役割分担になっている。
放映権とスポンサー戦略
特筆すべきは、放映権とスポンサー戦略である。
通常、スポーツイベントの最大収益源は国内放映権だが、マスターズは巨額収入をあえて得ていない。アメリカの民放テレビ局のCBSやスポーツ専門チャンネルESPNと提携しながらも、放送内容の主導権を保持することを優先し、完全な商業化を避けている。
この判断は短期的な利益を犠牲にしてでも、長期的なブランド価値を守るという意思の表れである。
会場内ではスマホの持ち込みは一切禁止である。メディアも例外ではない。今年は、全英オープン王者のマーク・カルカベッキア(65歳)が、スマホを使用したことでオーガスタを退場となったと報じられた。
昨今のゴルフツアーでは観客が選手を撮影することが普通になっているが、これとは別世界である。個人がマスターズの様子をSNSで発信できなくしている代わりに、質の高い内容や高画質のSNSを大会が発信し、そのブランド価値を高めているわけだ。
スポンサーも極めて限定的である。
次ページが続きます:
【マスターズにおけるスポンサーの役割】
