ちょっと気を緩めると、すぐに置いてきぼりにされ、その関係性がわからなくなる難しさがあり、集中力を要する大人向けストーリーの側面もある。
ラストはベタだ。だが、それがいいのだろう。怒涛の展開のド派手なアクションシーンの連続に大興奮し、最後はわかりやすくてスッキリする。そんな映画は、子どもだけでなく、大人にとっても理屈抜きに楽しい。それが『名探偵コナン』なのだ。
本シリーズのビジュアルは、昨今のCGアニメーションによる高精細な映像とは対照的に、昔ながらの子ども向けファミリーアニメの趣が色濃い。一方、物語は大人を唸らせる本格サスペンスになる。
そのバランスも、ファンの間口の広さにつながっているだろう。
『名探偵コナン』のテレビアニメは、今年で放送開始から30年になる。かつて子どもだった視聴者は、その作品性から、大人になっても変わらずファンで居続ける。そして、いまの子どもたちが新たなファン層に加わる。そんなサイクルが確立しているから、年月とシリーズを重ねながら、ファンのパイを拡大してきている。
そこにコロナ禍のアニメブームとイベントムービー化からライト層が加わり、100億円超えをデフォルトにする一大タイトルに成長した。
時代の流れに乗って人気を拡大してきた本シリーズだが、その根底には強固な物語の芯となるクリエイティブがあり、それがファンの定着につながっているのは言うまでもない。それは今作からもひしひしと感じられた。
シリーズの行方を占う負けられない戦い
この先もシリーズが続く限りファンは拡大していくはずだ。しかし、昨年はシリーズ歴代最高となった前年の興収を下回る結果になった。
その背景には、『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』と『国宝』の記録的ヒットによる話題性の低下から、ライト層やリピーターの動員への影響があったことが予想される。
昨年がファン層のベースとすれば、もし今年、前年より興収を下げる2年連続のマイナスになれば、ジリ貧の局面を迎えている印象は拭えない。今年はシリーズのこの先の行方を占う興行になり、映画会社にとっては、決して負けられない戦いになる。
だから、映画会社は、例年以上に宣伝に注力してきた。そうしたことで封切り前からさまざまな話題がネットニュースになり、ファンの期待を煽った。その結果、爆発的なスタートにつながったのだろう。
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【歴代最高が期待できる出足】
